用語解説 p54-58_イスラーム

イスラーム(イスラム教)(→p.54、68) イスラームとはアラビア語で、神に服従することを意味する。7世紀にムハンマドが開いた、厳格な一神教。

メッカ(→p.54、55) イスラームの聖地。ムハンマドの出身地。礼拝はメッカにあるカーバ神殿の方向(キブラ)に向かって行われる。ハッジと呼ばれる巡礼の目的地となっている。

アッラー(→p.55) アラビア語で神という意味。ムスリムにとって唯一の神。「アッラー」は固有名詞ではないので、キリスト教の神もユダヤ教の神も、アラビア語では「アッラー」と訳す。

『クルアーン』(al-Qur'ān)(→p.55、57) ムハンマドが授かったアッラーの言葉を記したもの。アラビア語で「読誦されるべきもの」という意味。最初、ムハンマドの言葉は信徒により記憶されていたが、7世紀中頃、ほぼ現在の形に編纂・文書化された。

ヒジュラ(聖遷)(→p.55) アッラーの言葉を授かったムハンマドはメッカで宣教を始めた。しかし、部族神・多神教を否定したため迫害され、622年にメディナに逃れた。これをヒジュラと呼び、この年がイスラーム暦の紀元となっている。

カリフ(Khalifah)(→p.55) アラビア語で代理者を意味するハリーファに由来。正しくは「アッラーの使徒の代理人」のこと。ムハンマドの後継者であり、ウンマの宗教・政治指導者。初代から4代までの時期を「正統カリフ時代」と呼ぶ。

六信(→p.55) 信仰の基本となる次の6つの教義のこと。①神(アッラー)、②神と人を結ぶ天使、③聖典(『クルアーン』、『旧約聖書』など)、④預言者(ムハンマドは最後の預言者)、⑤来世(天国と地獄)、⑥天命。

共同体(ウンマ)(→p.55、56) ムハンマドは当時の部族社会や血縁関係による共同体を否定して、アッラーの前にすべての人間は平等であるとする宗教的共同体を作った。これをウンマと呼ぶ。

五行(→p.56) ムスリムは信仰を右段上の表にまとめた5つの実践で行動・態度に示さなければならない。
信仰告白(シャハーダ):「アッラーのほかに神はなし」と「ムハンマドはその使徒なり」という、イスラームの最も根本的な信条の宣言。
礼拝(サラート):1日5回の礼拝。信徒の義務であり、「アッラーは偉大なり。アッラーのほかに神はなし」の朗誦から始まる。
喜捨(ザカート):収入と貯蓄に課せられる救貧税。ウンマの連帯と信仰を高めるためのもの。貧者、困窮者、改宗者、旅人のほか、借金で奴隷となった人の解放のためにも使われる。
断食(サウム):日の出一時間前から日没まで飲食を断ち、身を慎むこと。イスラーム暦9月(ラマダーン)の断食は義務であり、その他の時期に任意の断食を行うこともある。子どもや高齢者、病人などは免除される。
巡礼(ハッジ):メッカのカーバ神殿と周辺にある聖所への巡礼。一生に1度行えばよく、イスラーム暦12月に行われる。

ムスリム(Muslim)(→p.54、56、58) イスラームの教えによって神に帰依者という意味。六信を受け入れ五行を実践する誓いを立てる。ムスリムの中では、年齢、性別、人種、信仰経歴、地位・財産などによる差別はない。

シャリーア(イスラーム法)(→p.56) もとは「水場への道」、「従うべき正しい道」の意味で、信徒が従うべき様々な定めのこと。『クルアーン』、ハディース(伝承)に記録されたスンナ(ムハンマドの言行)などを根拠として成立している。

スンナ派(→p.56) スンナと『クルアーン』を信仰の基盤とする、イスラームの多数派。初代から4代目のカリフを認める。

シーア派(→p.56) シーアとは党や派を意味し、もとは「シーア・アリー(アリー派)」という。ムハンマドの娘婿のアリーとその子孫を、ムハンマドの正統な後継者と考える。

ジハード(聖戦)(→p.57) もとはアラビア語で「努力すること」を意味する。イスラームでは「神のために努力すること」をさす。ヨーロッパで翻訳される際に「聖戦」と訳され、「異教徒との戦い」が強調されるようになった。

ハラール(→p.58) イスラーム法において合法なもののこと。非合法なもののことをハラームという。ムスリムは、ハラールに処理された食品を食べて生活している。イスラーム法に則って処理がされていない食肉はハラームとなる。