用語解説 p196-199_日本固有の思想

風土(→p.197、266) 気候や地形など人間を取り巻く自然的・地理的条件。そこに居住する人間の生活様式や文化は、風土的条件の影響を受けるといい、和辻哲郎はこれをモンスーン型・沙(砂)漠型・牧場型の三つに類型化した。

アニミズム(→p.197) 自然物には霊魂が宿るとして、あらゆる自然を信仰する自然崇拝・精霊信仰。日本では縄文時代からみられ、のちの日本固有の神信仰の原型となった。

八百万の神(→p.197) 古代日本で信仰された多くの神々の総称。日本ではアニミズムの信仰があり、あらゆる自然物や自然現象に神が宿ると考えられたことから、数多くの神が想定された。

産土神(→p.197) 土地の守護神。産土とは出生地を意味し、そこを守る神をさしたが、やがて同属集団を守る氏神と同義になった。

祀る神・祀られる神(→p.196) 和辻哲郎の指摘した神の性格。例えば、天照大神は背後にひかえる他の神を祀り、その言葉を人々に告げるが、そのことによって神聖視され、神として祀られるというもの。

『古事記』(→p.198)  神代から推古天皇までを扱った日本最古の歴史書。古い伝承を天武天皇が稗田阿礼に暗誦させ、それを元明天皇が太安万侶に筆録させ、712年に完成。物語性が強い。

『日本書紀』(→p.198)  神代から持統天皇までを扱った歴史書で、『古事記』と重複する部分が多いが、中国の正史にならって正式な歴史書として編纂された。720年完成。

(→p.198) 古代日本において罪悪とされた、共同体のしきたりを破り社会秩序を乱す行為。病気や自然災害も含まれる。のちに、「天津罪」、「国津罪」と呼ばれるものに分類された。

穢れ(→p.198) 社会生活を脅かし災厄を招くもの。死の穢れや血の穢れなどがあり、祭祀に支障をきたすものとされた。特に重いとされたのが死の穢れである。

祓い(→p.198) 罪を償うために代償物として供物をささげたり、人形(ひとがた)などの寄り代に穢れを付着させて川などに流すことで、身に付いた罪・穢れを祓うこと。

(→p.198) 川や泉・海などの神聖な水に浸かり、身を清めることにより、罪・穢れを洗い落とす方法。日本では、罪・穢れは比較的簡単に取り去ることができると考えられた。

清明心(→p.199) 清き明き心ともいう。神に対する時に求められた心のありようで、曇りなく邪なところのない心。清き心と明き心からなり、古代日本で最も尊ばれた。

正直(→p.199) せいちょくと読む。正しく真っ直ぐな心。古代の日本人が尊んだ、うそ・偽りのない清明心を引き継ぎ、神道において邪心のない心をいう。中世の武士階級の私欲を抑えた徳も正直といった。

神道(→p.199) 日本古来の素朴な神信仰が、仏教の受容などに刺激されて整備・理論化されていったもので、日本固有の宗教とされる。伊勢神道・唯一神道・垂加神道・復古神道など様々な神道が生み出されていった。

日本文化の重層性(→p.199) 和辻哲郎が指摘した、日本文化の特徴。固有の文化に固執せず、外来文化を積極的に受容する。その際、新しい文化が古い文化を駆逐するのではなく、積み重なって層をなし、共存していく形態をとる。