用語解説 p137-145_社会主義の思想

空想的社会主義(→p.138) オーウェン、サン=シモン、フーリエらの社会主義思想を意味する言葉。社会問題の原因を個人主義に基づく利己的な競争に見いだし、人々の支え合いを実現することで問題を解決しようとした。マルクスは、彼らの思想には資本主義の科学的分析が欠如していたため、「空想的」と表現した。

資本主義(capitalism)(→p.138) 私的所有、市場経済、営利企業の活動などの要素からなる、自由な経済活動を中心とした経済制度・体制。近代では土地や労働力の自由な取り引きが容認されたことで、飛躍的に成長を遂げた。

労働の疎外(→p.140) マルクスが指摘した、資本主義社会における労働者(プロレタリア)が、人や物など様々な関係から切断されることで経験する苦悩。①生産物からの疎外、②生産過程からの疎外、③類的疎外、④人間疎外の4つの疎外からなる。

労働者(プロレタリア)(→p.140) 生産手段(労働に必要な道具や材料)を所有せず、労働力を資本家に売り賃金をもらうことで生活する人々。これに対し、生産手段を所有し、労働者を賃金により雇用する人々を資本家(ブルジョワ)と呼ぶ。

科学的社会主義(→p.141) マルクスやエンゲルスが自らの社会主義をさして用いた言葉。それ以前の社会主義(「空想的社会主義」)には欠如していた資本主義についての科学(経済学)的分析を行ったため、科学的と称する。

唯物史観(史的唯物論)(→p.141) 経済に規定された階級闘争が人類の歴史を動かしていくという、マルクスが提唱した歴史観。それによれば、生産関係という階級同士の関係に代表される下部構造が、人々の意識や法律・政治などの精神的活動(上部構造)を規定しており、生産関係が階級闘争により変動することで社会は変化し発展するとされる。

階級闘争(→p.141) 唯物史観において、社会の歴史的発展をもたらすと考えられる階級間の衝突。社会発展の各段階において、支配的階級と被支配的階級の関係が、発展する生産力の足かせとなることで生まれる。

共産主義革命(→p.141) マルクスによれば、資本主義社会では資本家が生産力をコントロールできずに恐慌が繰り返される。その結果、計画経済により生産力をコントロールする共産制社会へと必然的に移行するという。この移行を実現する革命を共産主義革命と呼ぶ。20世紀に入り、共産主義革命は1917年のロシア革命をはじめとして実際に遂行された。

マルクス・レーニン主義(→p.143) レーニンがマルクス主義を当時の世界情勢に適用して作り上げた思想。資本主義が帝国主義という新たな段階に入ったことを指摘し、マルクス主義の資本主義に対する認識を現実に合わせたとされる。

帝国主義(→p.143) 金融資本を中心に独占が進展している段階で、海外に市場・原料や資本の投下先を求めて進出する膨張主義。レーニンによれば、独占資本が資本を輸出して後進地域を支配下に置こうとすることで、世界が先進資本主義国家により分割されてしまい、さらなる植民地争奪を求める帝国主義戦争を生み出す。

新民主主義論(→p.143) 毛沢東が唱えた、民主主義社会で資本主義を発展させたのちに社会主義へと移行すべきであるとする、二段階革命論。毛沢東は、資本主義化が遅れている中国では、まずは社会主義社会ではなく民主主義社会をめざして革命を起こすべきだとし、この革命を新民主主義革命と呼んだ。

フェビアン協会(→p.144) 1884年に結成され、バーナード・ショウ、H.G.ウェルズ、ウェッブ夫妻などイギリスを代表する知識人が集った協会。暴力的な革命ではなく、古代ローマの将軍ファビウスの戦法のように、少しずつ社会主義的な目的を達成するという立場に立つことから命名された。のちのイギリス労働党の母体となった。

社会民主主義(→p.144) マルクス主義とは異なり、革命ではなく、議会制民主主義の枠内で社会主義の理想を追求する社会主義思想。イギリス労働党やドイツ社会民主党の立場。第二次世界大戦後、この考え方を基盤の一つとして福祉国家が生み出された。

修正主義(→p.145) ドイツの政治家ベルンシュタインがマルクス主義を批判して打ち出した新たな社会主義のあり方。マルクス主義の唯物史観、資本主義の必然的崩壊論、暴力革命主義、共産党一党独裁を否定し、複数政党による議会制民主主義を通じて漸進的に社会改革を進めるべきだとした。