●「見えざる手」(→p.131) アダム・スミスが『国富論』で用いた言葉。人々が他者から共感を得られる正義に基づいて、自己の利益を追求して経済活動を行うことが、結果的に公共の利益の実現につながるというメカニズムを意味する。一般的に神の「見えざる手」といわれることが多い。
●功利主義(utilitarianism)(→p.132、134) ベンサムやJ.S.ミルらの倫理学の立場。法や行為の善悪を、それがもたらす快楽と苦痛を数量化し計算することで客観的に判断しようとする。
●快楽計算(→p.132) ベンサムら功利主義者が、法や行為の善悪を判断する際に行う計算。法や行為のもたらす快楽・苦痛の「強さ」、「持続性」、「確実性」など7つの要素を計算・考慮し、総計で快楽が多ければ善と判断する。
●「最大多数の最大幸福」(→p.132) できるだけ多くの関係者の快楽を、できる限り増大させること。功利主義においては、これをもたらす行為や法は善であるとされる。また、苦痛の減少は善であり、逆に苦痛の増大・快楽の減少は悪である。
●サンクション(制裁)(→p.133) 人間に何らかの行動をとらせるための強制力。ベンサムは、サンクションを①物理的、②政治的、③道徳的、④宗教的の4種類に分類した。
●質的功利主義(→p.134) J.S.ミルがベンサムを批判して確立した功利主義の立場。快楽には質の違いがあることを指摘し、人はよりよい質の快楽をめざすことを重視すべきだとする。
●内的制裁(→p.134) 「良心」を意味する。ミルは、ベンサムが重視した法という外的強制力に加えて内的制裁を重視し、これを人々の心に抱かせるように教育を行うべきだとした。
●『自由論』(→p.135) ミルの主著。民主主義のもたらす多数派の専制の危険性を指摘し、個人の意見や行動が他人に悪影響をおよぼさない限り、社会は個人の意見や行動に干渉してはならないとする他者危害の原則を打ち出した。
●実証主義(→p.136) 自然科学の発展が進む19世紀に広まった、自然法則によって表現される知識のみが科学的であるとする考え方。コントによれば実証主義とは、真理の相対性を自覚し、事実の観察と仮説・検証による法則の発見をめざす立場である。
●社会進化論(→p.136) 自然界における生物進化のメカニズムを社会にあてはめ、その発展のあり方を考える理論。19世紀後半以降、スペンサーらによって提唱された。資本主義の自由競争や、それがもたらす格差拡大などを正当化する役割も果たした。
●『種の起源』(→p.136) ダーウィンの主著(1859年)。彼はこの著書の中で、「同種の個体の間で生存競争に有利な個体差を持つ個体がその個体差を遺伝させることで種は進化する」という自然選択説などからなる進化論を主張した。