8 現代日本の思想

1 日本哲学の確立
西田幾多郎(1870~1945)
主著『善の研究』『働くものから見るものへ』
西洋思想と東洋思想・日本思想を融合させた独創的哲学
純粋経験……主客未分(主観と客観の分離以前)の直接的な経験 例:音楽に没入
善……人格の実現。真の自己を知り、自己を完成すること
絶対無……物事が有る/無いという場合の無を超えた、すべての存在の根拠となる無

②和辻哲郎(1889~1960)
主著『人間の学としての倫理学』『風土』『倫理学』
間柄的存在……人は、人と人との関係(間柄)においてのみ人間たりうる間柄的存在
風土……単なる自然環境ではなく、人間の精神構造の中に刻み込まれた自己了解の仕方。自然環境と人間の文化を風土と結びつけて三つに分類(モンスーン型・沙(砂)漠型・牧場型)
西洋近代思想の個人主義的倫理学を批判→倫理とは人と人との間柄の問題である

③鈴木大拙(1870~1966)
仏教哲学者
禅と日本文化を海外へ紹介
主著『日本的霊性』
霊性……民族の生活に根を下ろした真の宗教意識。日本では鎌倉時代の浄土系思想と禅に姿を現した(日本的霊性)
即非の論理…… 「A、即非A、是名A」(Aとは、Aという実体が無い、ゆえにAといわれているだけにすぎない)

2 民俗学の展開
柳田国男(1875~1962)
日本民俗学の創始者
主著『遠野物語』『民俗伝承論』『海上の道』
民俗学……文献史料に記録されない無名の人々の生活と信仰を明らかにしようとする学問
常民……民間伝承を保持している基層文化の担い手である階層

②折口信夫(1887~1953)
国文学・民俗学・芸能史を研究
主著『古代研究』
まれびと……古代日本の神の基本的性格。神は「常世」より来訪し、人々の歓待を受けて帰っていく

柳宗悦(1889~1961)
民芸運動の創始者。日用品の中に美が豊かに宿ることを発見
主著『民芸四十年』

南方熊楠(1867~1941)
博物学・民俗学者
神社合祀反対運動で鎮守の森の生態系と伝統的祭礼習俗を守る

⑤宮本常一(1907~81)
民俗学者
日本全国各地を歩き回り人々の生活を記録
主著『忘れられた日本人』

3 さまざまな思想
宮沢賢治(1896~1933)
詩人・童話作家
主著『農民芸術概論綱要』『銀河鉄道の夜』
科学と法華経信仰を基礎にすべての生命の幸福を求める

4 現代の思想
小林秀雄(1902~83)
近代批評(批評を通じて自らの主観を表現する)の確立者 
主著『様々なる意匠』

坂口安吾(1906~55)
小説家。権力が作り出した価値観を否定、『堕落論』で人間性の回復を訴える

丸山真男(1914~96)
政治学者。戦後民主主義をリード 
主著『増補版 現代政治の思想と行動』『日本の思想』
大日本帝国の精神構造……日本で戦争を主導した人々の、主体性の欠如、無責任の体系を指摘
日本の思想状況……共通の基盤を持たない様々な思想が閉鎖的に雑居している、底の浅いタコツボ型と表現→雑居を雑種という新たな個性に高める必要性を説く

加藤周一(1919~2008)
高い見識と卓越した知性による文明批評
主著『雑種文化』『日本文学史序説』
日本文化の雑種性に積極的な意味を認め、雑種性の持つ可能性を説いた

⑤竹内好(1910~77)
魯迅の研究・翻訳、近代日本文化を批判。
主著『近代の超克』『方法としてのアジア』

吉本隆明(1924~2012)
大衆とともに歩んだ「知のカリスマ」
主著『言語にとって美とは何か』『共同幻想論』
国家とは共同の幻想であり、個人としての思考の自立を説いた