1 ギリシア思想

①神話から哲学へ
・神話……神々の営みにより世界を説明=神話的世界観
 ホメロス『イリアス』『オデュッセイア』
 ヘシオドス『神統記』
・閑暇(スコレー)……労働を奴隷に任せることで市民が得た時間のゆとり→討論や学問→哲学が誕生
フィロソフィア……「知恵を愛する」という意味。哲学(フィロソフィー、philosophy)の語源
 理性(ロゴス)……本来、言葉という意味。論理、理性、法則などという意味にまで深められた
 テオーリア(観想)……「観る」という意味。感覚の目ではなく、理性の目で物もの事ごとの本質や真理を「観る」

②自然哲学者
・ギリシア植民市ミレトス(小アジアのイオニア地方)のタレスから始まる→最初の哲学者
 自然界のアルケー(根源・原理)の探究を始める。アルケーを何であると考えるかで立場が異なる

③ソフィスト
アテネにおける民主制の確立の時期に登場。徳(アレテー)、弁論術を教える職業教師
 →自然哲学者……哲学の対象はピュシス(自然・本性)
 →ソフィスト……哲学の対象はノモス(人為的なもの)→法・制度など
プロタゴラス(前490頃~前420頃)……「万物の尺度は人間である」 →価値の相対主義
・ゴルギアス(前483頃~前376頃)……弁論術を教える

④ソクラテス(前469頃~前399)
・「汝自身を知れ」……デルフォイのアポロン神殿に掲げられていた言葉。ソクラテスの哲学の出発点
デルフォイの神託……「ソクラテス以上の知者はいない」→確かめるために問答→反発を招き告発される
問答法……問答(対話)を重ねて物事を探究。助産術ともいう。「無知の知」→真の知を引き出す
・よく生きる……ソクラテスの思想の中心テーマ
 魂(プシュケー)のよさこそ徳、徳は幸福に不可欠(福徳一致)、「徳は知である」(知徳合一)
 →魂への配慮を求める
 →ソクラテスの倫理の中心。裁判でこの重要性を陪審員に語る
・ソクラテスの死 「ただ生きるのではなく、よく生きることこそ大切である」
 プラトンの著作(『ソクラテスの弁明』『クリトン』)により伝えられる

⑤プラトン(前427~前347)
主著『饗宴』『パイドン』『国家』
ソクラテスの弟子。ソクラテスの思想を受け継ぎイデア論として発展させた
イデア……生成消滅しない真の存在。感覚ではなく理性(知性)によってとらえられる。プラトンの思想の中心
 感覚によってとらえられる現象界⇔イデアからなるイデア界(真理の世界)
・想起説……思い起こすこと(アナムネーシス)。真理を学ぶこと=知っているイデアを思い起こすこと
エロース……真理の世界であるイデア界を恋い慕う心。哲学の原動力
・魂の三部分説と国家の三階級
 国家の三階級:統治者・防衛者・生産者
 魂の三つの部分:理性・気概・欲望
哲人政治……プラトンが説いた理想の政治のあり方。善のイデアを認識する哲学者が統治する

⑥アリストテレス(前384~前322)
主著『形而上学』『ニコマコス倫理学』
プラトンの学園アカデメイアで学ぶ。幅広い学問を修める
・本質は現実の物事に内在
 形相(エイドス)……事物に内在している本質
 質料(ヒュレー)……事物の素材
最高善……人間の行為の目的である「よきもの」
 →最高善を真理の追究とする観想(テオーリア)的生活こそ幸福
・徳
 知性的徳……知恵(ソフィア)、思慮(フロネーシス)
 性格的徳(倫理的徳、習性的徳)→性格的徳の基準として、中庸(メソテース)を主張
正義
 全体的正義
 部分的正義―配分的正義と調整的正義
・友愛(フィリア)……動機によって三つに分類(有用性、快楽、卓越性)→卓越性に基づくのが真の友愛

⑦ヘレニズムの思想家
・ヘレニズム時代……ギリシア文化が各地に伝わり、その地の文化と融合し独自のヘレニズム文化が成立
 →コスモス(世界)の中で生きる市民という意識→世界市民(コスモポリテース)
・エピクロス(前341頃~前270頃)
 エピクロス派の祖
 快楽主義に立ち、アタラクシア(心の平静)を説く。「隠れて生きよ」
・ゼノン(前334頃~前262頃)
 ストア派の祖
 禁欲主義に立ち、アパテイア(情念に支配されない状態)を説く。「自然に従って生きよ」
 人間の自然(=本性)は理性(ロゴス)
・ローマ時代の思想家……キケロ、セネカ、プロティノス(新プラトン主義)