5 イギリス功利主義

①アダム・スミス(1723~90)
主著『国富論(諸国民の富)』『道徳感情論』
正義に基づく経済競争(フェア・プレイ)が行われれば、神の「見えざる手」が社会の繁栄を生む
共感……他者の立場にいる自分を想像し、他者と同じ感情を抱いて、他者の感情の適切さを判断する能力
公平な観察者……特定の利害関心から独立した第三者的視点

②ベンサム(1748~1832)
主著『道徳および立法の諸原理序説』
公正な法律の客観的基準として功利性の原理を提唱 →「最大多数の最大幸福」が善
快楽計算……幸福(快楽の増大)・不幸(苦痛の増大)を量的に計測(量的功利主義)
・サンクション(制裁)……人間に何らかの行動をとらせるための外的な力。社会の快楽を減少させる行為を苦痛により予防
 →4つのサンクション(物理的、政治的、道徳的、宗教的)
・社会改革……議会改革、パノプティコンの設計

③J.S.ミル(父はジェームズ・ミル)(1806~73)
主著『功利主義論』『自由論』
ベンサムの量的功利主義に欠ける「感情・人間性」を補い、質的功利主義を提唱
質的功利主義……幸福の質の違いや複雑さも重視した功利主義
 →「満足した豚よりも不満を抱えた人間の方がよく、満足した愚か者よりも不満を抱えたソクラテスの方がよい」
・自由論……社会、個人の個性の発展には自由が不可欠。他者に悪影響を及ぼさない限り、社会は個人に干渉してはならない(他者危害の原則)→愚行権を承認
 女性の解放を求める

④実証主義と社会進化論
コント(1798~1857)
 実証主義……自然法則によって表されるもののみが科学的で知識の対象となるとし、観察によって法則を探究しようとする立場→これを社会へ適用する(社会学の提唱)
スペンサー(1820~1903)
 社会進化論……生物学(進化論)を社会へ適用したもの。「適者生存」・自由放任政策を擁護