p87-95裁判所の機能と司法制度
日本国憲法では、天皇の名において裁判が行われた大日本帝国憲法下に比べて、司法権の独立が強化され、裁判所に違憲審査権を与えた点が異なる。また、大日本帝国憲法下では通常の裁判所の系統外に特別裁判所が設置されていた。
違憲審査権などを通じた裁判所の独立と、裁判官の身分保障などを通じた裁判官の独立とによって守られている。
裁判官は行政府などの圧力から独立して裁判を行う必要があるため、その身分が保障されている。
一審は通常、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所のいずれかで行われる。控訴されると刑事裁判では高等裁判所で二審が、さらに上告されると最高裁判所で三審が行われる。民事裁判では高等裁判所または地方裁判所で二審が、最高裁判所または高等裁判所で三審が行われる。
ただし、三審制そのものが憲法に規定されているわけではなく、一審から最高裁への跳躍上告の制度や、選挙又は当選の効力に関する訴訟などのように、一審が高等裁判所で行われた後に二審までとなる制度などもある。
民事訴訟は、私人が私人を訴えることで始まる。財産権に関する紛争の解決のために行われることが多い。
刑事裁判は、犯罪を犯した疑いがある者(被疑者)について、検察官が、十分な証拠があると判断し起訴することで始まる。
裁判員裁判の対象となるのは、死刑や無期懲役などに相当する重大な刑事事件の第一審である。
少年は未熟で成長途中の存在であるため、環境の変化や適切な教育により立ち直ることができると考えられる。そのため、少年の保護・更生の観点から成人と同様の刑事手続とは異なり、まずは家庭裁判所の審判に付されることになっている。
応報刑論は、犯した罪に相応の刑を与えるという考え方で、目的刑論は犯罪の抑止のために刑罰を行うという考え方である。応報刑論では報復的な感情から残酷な刑罰が正当化される懸念があり、目的刑論では抑止のために行為に対して過剰な刑罰が設定される懸念がある。
日本の違憲審査制は、具体的な事件の裁判の中で通常の違憲審査が行われる、アメリカ型の付随的違憲審査制である。このほかに、具体的な争訟とは関係なく憲法裁判所が法令の違憲審査を行う、ドイツ型の抽象的違憲審査制がある。