●ソクラテス(前469頃~前399)(→p.47) 石工と助産師の間に生まれた彼は,アテネの繁栄期から没落期に至る時代を生き,スパルタとの間で戦われたペロポネソス戦争にも従軍している。彼のアテネ市民へのはたらきかけは,没落するアテネ民主制を立て直すためのものでもあった。
●無知の知(→p.47) 自分の無知を自覚すること。ソクラテスが「ソクラテス以上の知者はいない」というデルフォイの神託を確かめるため,当時の知者たちを訪ね歩いて気づいた「自分は知らないことを知っているという点で,彼らに優っている」という結論に基づくソクラテスの営みの出発点。
●プラトン(前427~前347)(→p.48) ソクラテスに学んだ彼は,師の遺志を受け継いで,「よく生きる」ことの大切さ,さらにそれを保証する「よき政治」のあり方を生涯にわたって求めた。また,彼は一切の著作を残さなかったソクラテスの言動を数々の対話編という形で残しており,アカデメイアという学園運営とともに,後世に与えた影響は絶大である。
●アリストテレス(前384~前322)(→p.48) プラトンのアカデメイアに学んだ彼は,師の理想主義的な思想に対して,現実主義的な立場に立って諸現象を説明しようとした。広範な学識は,自然学から政治学にまでわたり,万学の祖と称される。
●アリストテレスの政治論(→p.48) アリストテレスは国制を統治者の数で,一人=君主制,少数=貴族制,多数=共和制に分類し,それぞれの堕落形態を僭主制,寡頭制,衆愚制とした。共和制が極端な状態にならない中庸を得たものだとした。
●儒教(儒学)(→p.49) 孔子によってはじめられ,戦国時代には諸子百家 の1つの儒家として発展し,孟子や荀子があらわれた。前漢の武帝以降は,国家統治の基本原理とされた。政治思想としては,徳治政治の立場をとる。日本にも早くから伝わったが,特に江戸時代には,封建秩序の安定のために朱子学が官学として採用され,陽明学などそのほかの学派も繁栄した。
●仁(→p.50) 孔子が重視した人倫の基本。礼が行為の形式であるのに対して,仁は他者に対する思いやりの情である。
●朱子学(→p.34,50) 中国宋代に朱子によって集大成された新儒学。中国では,仏教や道教が興隆して以来,儒教は劣勢にあったが,宋代にそれらの世界観を吸収した新しい儒学が登場し,朱子が集大成した。その世界観は,「理気二元論」といわれる万物を貫く法則(理)と物質的要素(気)によって世界を説明しようとするものである。
●帰納法と演繹法(→p.51) 帰納法は,個々の具体的事例から一般的な原理・法則を導き出す方法で,ベーコンが提唱した。演繹法は,一般的な原理・法則から推論して結論を導き出す方法で,デカルトが提唱した。