●世界宗教(→p.38) 人類や民族を問わず,また,国家の壁を越えて,その信仰に帰依することを誓えば,誰でも信者となれる開かれた宗教。キリスト教・イスラーム(イスラム教)・仏教が代表的なものであり,三大世界宗教ともいわれる。ただし,信者の数の上では,仏教はインドの民族宗教であるヒンドゥー教と比べると少数派である。
●民族宗教(→p.38) 民族の成立に由来し,民族的な団結や共同体的一体感を維持し,高める役割を果たす宗教。ヒンドゥー教・儒教・道教・ユダヤ教・日本の神道などが該当し,神(または神々)と民族との関わりを記した神話や,神々への祭祀は,その国の民族文化の根底に強く流れている。
●ヒンドゥー教(→p.38) アーリア人の信仰(バラモン教)とインド土着のさまざまな習俗・信仰が融合して生まれた宗教。カースト制度をはじめとするインドの社会生活全般と複雑に絡みあっており,単なる宗教として捉えることはできない。
●ユダヤ教(→p.38) ユダヤ人は,ヤハウェに選ばれた民だと考える選民思想を特徴とする民族宗教。律法(トーラー)とタルムードを聖典とする。ユダヤ人が多く居住するところには,信者が集まるシナゴーグが建てられている。
●聖書(→p.38) キリスト教の聖典,『旧約聖書』『新約聖書』をさす。ただし,『旧約聖書』は,もともとはユダヤ教の聖典で,ユダヤ教では一般に律法(トーラー)とよぶ。ここには,唯一神ヤハウェとユダヤ人との契約,それに基づくユダヤ人の生き方の規範などが書かれている。これに対し,『新約聖書』は,イエスを通じた神との新しい契約=新約について述べられている。
●キリスト教(→p.39) ユダヤ教を母胎として生まれた,イエスをキリスト(メシア)=救世主と考える宗教。現在,カトリック・プロテスタント・ギリシャ正教会の3つに大きく分かれているが,「神とイエスと聖霊が実は1つの実体である」とする三位一体説を教義としている点では共通している。
●アガペー(→p.39) キリスト教でいう神の愛,完全な神が不完全なものに注ぐ無条件・無差別・無償の愛。
●イスラーム(イスラム教)(→p.39) 「(神の意志や命令に)絶対帰依すること」を意味する。ユダヤ教やキリスト教を底流として,7 世紀前半,ムハンマドによってはじめられた。
●アッラー(→p.39) イスラームの唯一・絶対の神。本来,アラビア語で神を意味する普通名詞に定冠詞をつけたもの。ユダヤ教やキリスト教のヤハウェと同一の神だが,ユダヤ教ではヤハウェをみだりに口にしてはならないのに対し,ムスリム(イスラームの信者)は「アッラー・アクバル(神は偉大なり)」などと始終声に出して唱えている。
●クルアーン(コーラン)(→p.39) イスラーム法の第一の根拠。ムハンマドのことばではなく,アッラーの命で天使がムハンマドに読み聞かせたもの。アッラーのことばそのものなので,本来は,アラビア語以外に翻訳できないことになっている。
●六信・五行(→p.39) イスラームの教えは,神への信仰とそれに基づく実践とからなる。信仰の最も基本となるのが, 6つの存在(神・天使・啓典・預言者・来世・天命)を信じる六信であり,実践の基本が,信仰告白・礼拝・断食・喜捨・巡礼の五行である。
●仏教(→p.40) 紀元前500年頃,北インドで,ゴータマ=シッダッタによってはじめられた。極端な苦行ではなく,正しい修行によって苦悩からの解放をめざす。スリランカや東南アジアでは上座仏教が,東アジアでは大乗仏教が信仰されている。
●慈悲(→p.40) 仏教的な愛。すべての生きとし生けるものたちの苦を取り除く悲しみと,楽を与える慈しみの心。