p30-37 用語解説

アニミズム(→p.31) 人間だけではなく,すべての動植物や無生物,雷などの現象に至るまで万物に霊魂,精霊などの霊的存在が宿ると考える信仰。日本の民間信仰にも,こうした要素が色濃く見出される。

法華一乗思想(→p.32) 大乗仏教の基本理念である「一切衆生悉有仏性」の『法華経』での展開において説かれたもので,仏に至る道はいくつかあるが,それらはすべて大乗菩薩乗に帰一するとする考え方。

念仏(→p.33) 本来,念仏は心に仏を念じる(観想念仏)の意味であった。その後,中国浄土教の流れのなかで,善導らが『無量寿経』における法蔵菩薩(阿弥陀仏の前身)による48誓願を根拠に,念仏をより平易な「口に称える念仏」と解釈した。法然は,この善導の解釈に拠っている。

本願(→p.33) 阿弥陀仏の前身である法蔵菩薩時代に立てた48の誓願をさす。それらの誓願は,迷える衆生が救済されるまでは,菩薩に甘んじて仏にはならないとするもので,特に第18番(私の名を10度でも称えた者が救われるまでは仏にはならない)が,重視されている。

朱子学(→p.34,50) 中国宋代に朱子によって集大成された新儒学。中国では,仏教や道教が興隆して以来,儒教は劣勢にあったが,宋代にそれらの世界観を吸収した新しい儒学が登場し,朱子が集大成した。その世界観は,「理気二元論」といわれる万物を貫く法則(理)と物質的要素(気)によって世界を説明しようとするものである。

古義学(→p.34) 孔子,孟子の原典を重視して,原典に記されたことばの意味を,時代に即して理解しようとする伊藤仁斎の立場。彼は,『論語』を「宇宙第一の書」として称揚し,『論語』のなかに人倫の基本としての「仁愛=誠」を見出した。

古文辞学(→p.34) 荻生徂徠の立場。彼は,伊藤仁斎の古義学をさらに発展させて,孔子が重視した古代の「礼」を「先王の道(安天下の道)」と位置づけて,儒学の本質を道徳にではなく,政治制度の確立に見出そうした。