p280-286 用語解説

フィスカル・ポリシー(→p.280) 景気の状況に応じて,国会や内閣が政策を決定しておこなう裁量的な財政政策。景気の過熱時には増税や公共事業の縮小によって有効需要の抑制を図り,景気後退期には減税や公共事業の拡大によって有効需要の拡大をはかる。

ビルトイン・スタビライザー(→p.280) 財政の機能に組み込まれている景気の自動調節機能。所得が増加する好況期は,累進課税制度によって,より高率の所得税が課せられ,消費の過熱が抑制される。また,所得の減少する景気後退期は,所得税率が低下したり,失業者に失業保険が給付されたりすることで,収入の減少が抑制され,一定の消費が維持される。こうしたメカニズムによって景気の変動が緩和される。

財政の硬直化(→p.281,285) 国債の増発にともなって,その利払いや元本返済のための経費が国の予算の大きな割合を占めるようになることで,弾力的な財政活動ができなくなる現象のこと。

財政投融資(→p.282) 社会資本整備のために,特殊法人や地方公共団体に対して国がおこなう投融資で「第二の予算」とよばれる。2000年までは,原資として郵便貯金や年金積立金があてられてきたが,財投改革により,財投機関債や財投債を発行して資金を調達するようになった。

累進課税(→p.283) 所得税などの課税において,所得が増えるにしたがって,高い税率を課すしくみ。日本では,1983年に最高税率が75%となったが,徐々に引き下げられ,一時40%となった。その後,再び最高税率は引き上げられ,2015年より45%となっている。

市中消化の原則(→p.285) 国債を発行する際に,日本銀行に引き受けさせることを禁止し,金融市場を通じて資金を調達しなければならないという原則。戦後のインフレは,国債の日銀引き受けによって,通貨供給量が急増したため生じた。その反省にたって,財政法第5条に定められた。

プライマリー・バランス(→p.285) 基礎的財政収支。公債費を除いた歳出と公債発行額を除いた歳入のバランス。赤字であれば,公共投資や社会保障などの経常支出を税収で賄うことができていないということを意味し,公債発行残高が増加することになる。日本は,2025年度までにプライマリー・バランスを黒字化する目標を立てているが,実現は厳しい。