②日本の伝統的なものの考え方
1 日本古来の精神
①八百万の神……人知をこえた自然現象や存在
②「ハレ」と「ケ」……特別な非日常と日常
③ケガレ(穢れ)……日常である「ケ」が乱れている状態。祓い(祓え)や禊で浄化する
④清き明き心(清明心)……他者のためを思う「清き心」と嘘・偽りのない「明き心」。日本人の基本的な精神性
2 仏教の受容と展開
①仏教の受容と定着……飛鳥時代に伝来した仏教は,日本の伝統的精神性の基礎となる
●聖徳太子(厩戸皇子)……憲法十七条の制定→【第1条】和の精神,【第2条】三宝を敬う,【第10条】凡夫の自覚
「世間虚仮,唯仏是真」……仏教とともに「和の精神」も日本の精神性の基礎に
②鎮護国家……仏教の力で天下の安寧秩序を実現する。除災・招福を目的とした,政府による仏教の保護
③神仏習合……諸仏と日本の神との融合,「諸仏が本体で神は諸仏が仮の姿として現れたもの」とする本地垂迹説が流行
④日本仏教の展開
●天台宗:最澄……すべてのものが成仏する可能性をもつ(一切衆生悉有仏性)という思想をもとに一乗思想を説く
●真言宗:空海……密教を大成。現世での成仏を説く即身成仏を広める
●浄土宗:法然……極楽往生のためには念仏だけを称えればよいとする専修念仏を説く
●浄土真宗:親鸞……念仏を称えることさえ阿弥陀仏のはからいであるとする絶対他力を説き,報恩感謝の念仏を広める
●臨済宗:栄西……禅の教えを広める。戒律を遵守し,禅の修行によって心身を磨くことを重視
●曹洞宗:道元……修行と悟りは一体である(修証一等)とし,ひたすら坐禅に打ちこむ只管打坐を説く
●日蓮宗:日蓮……法華経の教えを徹底し,現世を理想の世界に変えることによる現世での救済を説く
3 儒学の受容と展開
①儒学の受容と定着……おもに政治体制を支える思想として受容され,憲法十七条や律令制に影響を与える
②朱子学の展開……林羅山らを起点とし,江戸時代の秩序形成の基礎となる理論が展開。中江藤樹らによって陽明学も広まる
③儒学の展開……伊藤仁斎の古義学,荻生徂徠の古文辞学など,『論語』などの原典に回帰して実証的に儒学の真意に迫る学問が広まる
④国学の誕生……儒学の展開に影響を受け,江戸時代に日本古来の精神性を探究する国学が登場。本居宣長が明らかにした「もののあはれ」や「真心」など,日本人らしさの探求が進んだ
4 西洋思想の受容
①和魂洋才……東洋の道徳を本体として,西洋の知識・科学技術を受け入れる考え方
②啓蒙思想……福沢諭吉,中江兆民らが近代化の根幹にある思想を紹介。自由民権運動に影響
③個人主義……夏目漱石が,西洋の模倣でもエゴイズムでもない自己本位に根ざす個人主義を提唱
④日本の精神性とキリスト教の融合……内村鑑三,新渡戸稲造らが武士道とキリスト教を結合させる
5 西洋思想に挑む
①西田幾多郎……主体と客体が未分化の状態である純粋経験こそが,真実である
②和辻哲郎……人間は社会性と個人という両面をもつ間柄的存在,間柄に基づく新たな倫理を提唱
③柳宗悦……日用雑器にも美が宿り,そこに民族固有の美が存在すると考える民芸運動を展開
④柳田国男……歴史書などに記録されない無名の常民の日常に根ざした文化こそが日本の基層文化である
⑤丸山真男……「無責任の体系」(=主体性の欠如),タコツボ型の思考から脱するため,制度を監視・批判し,ある人が何を「する」かを評価の基準とする「する」論理を重視