①裁判所と人権保障

1 司法権の独立
司法のはたらき……社会における具体的な紛争を法に基づいて解決する
裁判所の独立……司法権は裁判所(最高裁判所と下級裁判所)のみに属する(憲法第76条1項)
特別裁判所の禁止(例:戦前の軍法会議)。行政機関による終審裁判の禁止(憲法第76条2項)
裁判官の独立……良心に従い独立して職権行使,憲法および法律にのみ拘束される(憲法第76条3項)
裁判官の身分保障(憲法第78条)
④司法権の独立が問題となった事例
大津事件……政府がロシアとの外交問題に配慮して裁判に干渉(行政府の干渉)
浦和事件……参議院法務委員会が国政調査権で裁判の量刑について干渉(立法府の干渉)
●平賀書簡事件……担当裁判官の上司が書簡で訴訟判断に干渉(司法府内部からの干渉)

2 裁判制度
①裁判の種類……民事裁判,刑事裁判,行政裁判
②裁判所の構成……三審制
最高裁判所,高等裁判所,地方裁判所・家庭裁判所,簡易裁判所
③裁判公開の原則……対審および判決は公開の法廷でおこなう
政治犯罪,出版に関する犯罪,国民の権利(憲法第3章)が問題となった事件の対審は必ず公開
対審の非公開……裁判官が全員一致で公序良俗を害する恐れありと判断した場合

3 憲法の番人
違憲審査権……明治憲法には規定なし。アメリカの司法制度導入
●対象……一切の法律,命令,規則または処分
●行使……具体的事件に付随して行使(付随的違憲審査制または具体的審査制)
●限界……統治行為論,司法消極主義

4 司法制度改革……国民の司法参加,法曹人口の増加と法曹養成制度
①国民の司法参加……裁判員制度(日本),陪審制(アメリカ,イギリスなど),参審制(ドイツ,フランス,イタリアなど)
②日本司法支援センター(法テラス)……民事法律扶助(無料法律相談,弁護士費用の立て替えなど),刑事事件における国選弁護人・少年事件における国選付添人の派遣に関わる事務,犯罪被害者支援などを実施
*日本弁護士連合会は,被疑者の求めに応じて弁護士を派遣する当番弁護士制度を設けている(1回のみ無料)
③裁判外紛争解決手続法(ADR法)……和解,斡旋,仲裁,調停など,裁判によらない紛争解決を推進