18アングロアメリカの暮らし
■アングロアメリカの自然環境
❶地形
西部:変動帯に位置し,ロッキー山脈などの高く険しい山脈が南北方向に連なる
東部:古い変動帯にあたる。高度の低いアパラチア山脈と並ぶように,南東側にピードモント台地や海岸平野が広がる
ミシシッピ川:安定大陸(安定陸塊)の中央平原を南流し,穀物輸送の大動脈となる。河口部には鳥趾状三角州が形成
北部:最終氷期に氷床に覆われ,五大湖などの氷河湖が多い。アラスカからカナダの太平洋岸にはフィヨルドが見られる
❷気候
・西経100度線にほぼ重なる年降水量500㎜の線を境に,西側に乾燥気候,太平洋沿岸に地中海性(Cs)気候が広がる
・湿潤気候の東側は温暖湿潤(Cfa)気候が広がる。北回帰線に近いフロリダ半島南部は弱い乾季のある熱帯雨林(Am)気候
➡メキシコ湾やカリブ海から熱帯低気圧のハリケーンが襲来。中央平原では暖気と寒気が衝突し,トルネード(竜巻)が多発
・高緯度地方…針葉樹林が広がる冷帯湿潤(Df)気候だが,太平洋沿岸は西岸海洋性(Cfb)気候,北極海沿岸はツンドラ(ET)気候 ➡冬季には,吹雪をともなう猛烈な局地風のブリザードが吹く

■アングロアメリカの産業
❶農業
適地適作適地適作…自然条件や社会条件に基づいた効率のよい農業地域が展開
・機械化の進んだ大規模な農業で,農民1人あたりの耕地面積が大きく,労働生産性が非常に高い
➡企業的農牧業が広がる農畜産物の大輸出国で,穀物メジャーなど農業関連企業(アグリビジネス企業)とのかかわりが強い
・ロッキー東麓のグレートプレーンズ…灌漑農業が盛んだが,オガララ帯水層の地下水の枯渇や土壌侵食が問題
・カナダ南部…プレーリーでの春小麦栽培など,アメリカに準じた農業形態となるが,中部以北は森林
❷工業
・五大湖沿岸…メサビの鉄鉱石とアパラチアの石炭が水運で結びつき,鉄鋼業を中心とした重工業地帯が発展
<1970年代以降>
・重厚長大型の工業に代わって,エレクトロニクスや航空・宇宙産業などの先端技術産業が発展
・産業の中心が,地価や人件費が安く温暖な南部に移動
・北緯37度以南各州の南部はサンベルト,北東部はフロストベルトやラストベルトなどと呼ばれる
➡現在のアメリカ経済の成長シリコンヴァレーを中心としたICT産業など,新しい産業が経済成長を支えている
➡課題
人件費の安い海外への工場移転によって空洞化が進んだ製造業の回復を目指し,新たな貿易摩擦が生じている

■アングロアメリカの生活文化と諸課題
❶アメリカの歴史
16世紀後半~
ヨーロッパ人の入植地が拡大。イギリスとフランスの入植者の対立が目立ち始め,18世紀には英仏両国が植民地戦争を繰り返す
➡1776年
・13の植民地は戦費調達のために重税を課すイギリスからの独立を宣言し,東部
13州からなるアメリカ合衆国が成立
・プロテスタント系キリスト教徒であるWASP(ホワイト・アングロ=サクソン・プロテスタント)が政治や経済,文化の中心を担う
➡19世紀~
・買収や併合を繰り返してミシシッピ以西に領土を拡大。開拓前線(フロンティア)が西へと進む
・富の獲得や成功を夢見るアメリカンドリームや,開拓者精神(フロンティア・スピリット)が引き継がれる
・西部開拓推進のため,開墾者に土地を提供するホームステッド法を制定。農地はタウンシップ制に基づき,800m四方に区画
・1848年,カリフォルニア併合。金鉱の発見でゴールドラッシュが始まり,西部への開拓者の大移動が展開
➡現在
ラテン系やアジア系の移民が増加し,多様な文化を持つ社会に変化しつつある
❷アメリカの課題…社会の中にかつての奴隷制に基づく人種差別が残り,抗議運動としてBLM(Black Lives Matter)が起こる
背景:南部では綿花プランテーションの労働力としてアフリカから連行された人々が奴隷とされ,現在もアフリカ系住民が多い
❸カナダの歴史…17世紀にセントローレンス川流域にフランス系住民が入植。イギリスとフランスの植民地抗争の結果,長くイギリスの支配下に置かれたが,1931年にカナダとして独立
❹文化…野球・バスケットボール・フットボール・アイスホッケーの4大プロスポーツの各リーグは,人気・収益とも世界最高峰