16ヨーロッパの暮らし
■ヨーロッパの自然環境
❶地形
北部
・安定大陸(安定陸塊)の広大な構造平野が広がる。
・古い変動帯にあたるスカンディナヴィア山脈・ペニン山脈・ウラル山脈などが見られる
・概ね北緯50度以北は氷期に氷床に覆われ,薄いやせた土壌。フィヨルドやモレーンなどの氷河地形が存在
・大西洋中央海嶺上のアイスランドのギャオ,パリ盆地周辺のケスタ地形など特色ある地形が見られる
南部
・変動帯にあたるピレネー山脈・アルプス山脈・アペニン山脈が連なる
・沖積平野や,スロベニアのカルスト地形,スペイン北西部のリアス海岸などが見られる
❷気候
西部:西岸海洋性(Cfb)気候
東部:冷帯湿潤(Df)気候
➡ほぼ全域が北緯35度から北極圏にかけての高緯度に位置するが,暖流の北大西洋海流(メキシコ湾流)と偏西風の影響で,冬季は西高東低の気温となる
南部:地中海沿岸は地中海性(Cs)気候 ➡夏季に亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)に覆われ乾燥する
北部:高緯度地方は日中時間の年較差が大きい。北極圏では白夜や極夜が見られる
■ヨーロッパの産業
❶農業…穀物栽培と食肉生産を2本柱とする有畜農業
南部:経営面積が小さく,高コスト(競争力が弱い)の国が多い
・地中海式農業で夏にブドウ・柑橘類・オリーブなどの果樹栽培や野菜栽培,沖積平野で灌漑による米の栽培が行われる
・冬は冬小麦栽培,秋から春にかけては野菜の促成栽培(遠郊農業,トラックファーミング)が行われる
・羊や豚を飼育 ➡夏に乾燥するため,移牧が行われる
北部:大規模な混合農業で経営面積が大きく,低コスト(競争力が強い)の国が多い
・19世紀ごろより新大陸から安価な穀物や牛肉が流入 ➡都市近郊に酪農や園芸農業が発達
・氷床に覆われていたやせ地ではライ麦・ジャガイモ・テンサイ・豚肉を,南部寄りでは小麦・乳牛・肉牛・ブドウを生産
・スイスではU字谷底の耕地が狭いため牧畜業が盛んで,移牧が行われる
東部:1990年ごろまで続いた共産主義時代の影響で,近代化が遅れる
EU:EU加盟国間の農業格差を補うためのEU共通農業政策 ➡財政負担がきわめて大きい
❷鉱工業…スウェーデンのキルナ鉄山や,北海油田・ガス田などの資源が存在
北部には,水量の変化が少なく,勾配が緩やかな河川と運河建設による内陸水路網が発達
産業革命以降,炭田立地の重工業三角地帯を中心に重化学工業が発達
➡原料の海外輸入依存度の高まりから,臨海部に新しい工業地域が形成
➡青いバナナ(ブルーバナナ)・サンベルト・シリコングレンなどの新工業地域が形成。航空機の国際分業体制や,南・東ヨーロッパへの製造拠点の移転が増える
❸エネルギー…福島第一原発事故以降,脱原発・脱石炭(脱二酸化炭素)を目指し,自然エネルギーの導入を加速
❹貿易…EUは輸出入ともに域内貿易率が高い。ノルウェーやアイスランドなどのEU非加盟国と欧州経済領域を形成
❺伝統産業…サードイタリー(第三のイタリア)をはじめ,各地に伝統産業が残る
❻観光業…地中海地域は北アメリカ・中国と並び,観光客が多く訪れる。バカンス制度によりヨーロッパは長期滞在型の旅行が主流
■ヨーロッパの生活文化と諸課題
❶民族…南部にラテン系,北部にゲルマン系,東部にスラブ系が多い。フィンランドやハンガリーはアジア系民族
❷文化と宗教
ローマ帝国の東西分裂以来
➡西欧文化:西ローマ帝国とフランク王国の影響。南部のカトリック・北部のプロテスタント,ラテン文字
➡東欧文化:ギリシャ文明と東ローマ帝国の影響。東方正教会,キリル文字
❸歴史
15世紀以降世界に進出
➡18世紀後半の産業革命後,19世紀にイギリス・フランスを中心に世界各地を植民地化
➡第二次世界大戦後の東西冷戦の対立期を経て,冷戦終結前後からヨーロッパ統合が進み,1993年に地域統合体のEUが誕生
❹諸課題…EU内の東西経済格差と域内移民の激増による摩擦
➡域外の発展途上国から押し寄せる移民・難民圧力とムスリム問題
➡EU離脱を選択する国も