12東南アジアの暮らし
■東南アジアの自然環境
❶地形
島嶼部:プレート境界に位置し,地震や火山が多い。サンゴ礁は観光資源としても活用
大陸部:3つの大河(メコン川・チャオプラヤ川・エーヤワディー川)の河口部にデルタ(三角州)が形成
❷気候…大部分が熱帯に属する
島嶼部とアンダマン海沿岸部…熱帯雨林(Af)気候や弱い乾季のある熱帯雨林(Am)気候 ➡ほぼ毎日,午後にスコールが発生
大陸部とインドシナ半島…サバナ(Aw)気候や温暖冬季少雨(Cw)気候 ➡季節風(モンスーン)の影響で雨季と乾季が見られる
■東南アジアの産業
❶農業 伝統的な稲作…季節風の影響で夏季に多雨となる気候を利用
島嶼部:島の傾斜地を階段状にした棚田
大陸部:3つの大河の中・下流域に広がるデルタ地帯
➡収穫した米は自国消費の傾向が強いが,タイとベトナムは安価な米の輸出が盛ん
➡緑の革命…高収量品種の開発により食料問題が改善。その一方,生産コストの増加による農民間の格差が拡大
・プランテーション農業…熱帯性の商品作物を栽培。植民地時代に基盤がつくられた
➡独立後は,多国籍企業の進出・開発とともに拡大
・アブラヤシ(パーム油)…新興国の経済成長で需要が増加。インドネシアとマレーシアで世界生産の約8割を占める
・コーヒー豆…ベトナムはドイモイ(刷新)政策以降,生産が盛ん
・バナナ…フィリピンでは日本市場向けに多国籍企業が農地を開発
・焼畑農業…熱帯雨林気候の地域を中心に,伝統的な自給的農業として営まれる。キャッサバやタロイモなどを栽培
❷工業…植民地時代は工業化が進まず ➡独立後は輸出加工区を設置し,外国資本と技術を求めて積極的な誘致政策を実施
・マレーシア…ルックイースト政策
・ベトナム…ドイモイ政策
・シンガポール…輸出型工業の育成,中継貿易港として発展
➡工業化が進み,現在は多くの国で主要輸出品目を工業製品が占める
・ASEAN(東南アジア諸国連合)…東南アジア10か国が加盟
背景:冷戦下の1967年に,反共産主義を目的に結成
原加盟国:インドネシア・シンガポール・タイ・フィリピン・マレーシア
拡大:冷戦終結後の1990年代,政情が安定したベトナム・ミャンマー・ラオス・カンボジアが加盟
➡経済・社会・文化面での発展を目指す地域連合に
➡1993年にはASEAN自由貿易地域(AFTA)が発足し,域内貿易の関税撤廃を目指す
➡ASEAN+3(日本・中国・韓国)やRCEP(地域的な包括的経済連携)など,広域経済連携協定を模索
➡経済成長にともない所得が向上する一方,域内格差などの課題も
❸観光業…セブ島やプーケット島のリゾート開発や,バリ島の異文化体験型,マレーシアのロングステイ型など多様
➡外貨の獲得,国内の所得や雇用などの経済効果をもたらす一方,環境悪化などの課題も
■東南アジアの生活文化と諸課題
❶歴史
中国とインドの間に位置し,古くから海上交通の要衝として重要な地位
➡19世紀以降はタイを除く全域が欧米列強の植民地に
➡第二次世界大戦後に独立
❷宗教…4世紀以降,ヒンドゥー教と仏教がインドから広がる
島嶼部:海上交易ルートが発達していたため,ムスリム商人によりイスラームが広まり定着
大陸部:現在も仏教が広く信仰される。ベトナムでは,儒教や道教など中国文化も影響
その他:フィリピンは16世紀以降のスペインの植民地支配の影響で,キリスト教(カトリック)が定着
❸民族…大半の国が多民族国家で,中国系移民=華人が各地に定住し,強い経済力を持つ独自のネットワークで結びつく
例:マレーシアとシンガポール
・元々定住していたマレー系(マレー語)
・16世紀以降移住した中国系(中国語)
・イギリス植民地時代に労働力として移住したインド系(タミル語)
➡各民族間の共通言語として英語を使用
➡マレーシアは,ブミプトラ政策でマレー系を優遇
❹文化…各国・地域の文化と中国文化やインド文化,イスラーム文化などが入り混じり,多様かつ重層的な文化が育まれる