p.226-227 FTA・EPA
問いの解答例・解説
問い 日本はFTA・EPAを進めているが,多国間での協定を結ぶ背景には何があるのだろうか。
【解答例】 ・日本国内の人口減少などにともなう,国内市場の縮小
・日本国内市場の縮小に対する,特に新興国市場などでの経済成長
・国内では飽和状態や頭打ちにある市場でも,外国の市場では成長していく可能性がある産業が海外に進出し,日本の経済成長に貢献できる
問い FTAとEPAの違いとは何だろうか。
【解答例】 FTAとEPAの違いは,EPAの方がより幅広い経済関係の強化をはかることができる点にある。EPAは関税の撤廃やサービス貿易における障壁の削減・撤廃だけでなく,投資や人の移動の自由化や知的財産の保護などが含まれる。
問い アメリカ離脱後でも,CPTPPを締結した意味はどこにあるのだろうか。
【解答例】 TPPはアメリカの離脱により,暗礁に乗り上げた。しかも,その理由がトランプ政権の誕生にともなう,「米国第一主義」という名の保護政策によるものであり,自由貿易を掲げるTPPは風前の灯となった。しかし,日本の主導により,あくまでも自由貿易を進める姿勢を貫いたことで,トランプ政権の誕生やイギリスのEU離脱などで進みつつあった保護貿易化の流れを一定程度止めることができたといえる。
問い 自由貿易協定のメリットとデメリットをふまえて,日本のこれからの貿易はどうあるべきか,選択・判断の手がかりとなる二つの考え方を活用して主張を明確にし,自分の考えをまとめよう。
【解説】 自由貿易を進め,その利益で損害を受けた人々をカバーするか,それともあくまでも産業保護の観点に立った貿易政策を進めていくのか,非常に難しい問いである。両者の利点と課題を整理することが必要であろう。自由貿易を進めれば,国内産業の競争や日本企業の海外進出が促進され,消費者にとっても外国製品が安価になれば利益がある。他方,日本の農業のように,大きな影響を受ける産業があることはいうまでもない。一方で,産業保護の観点に立てば,国内産業の衰退などをある程度防ぐことができ,食糧安全保障の観点からも国内産業の育成は重要である。他方,国内の競争が疎外され,外国企業との競争という点では厳しい立場となる。このように,それぞれの利点と課題を整理して考えてみよう。
問い FTAとEPAの違いをまとめよう。
【解答例】 農林水産業などの幼稚産業は守りながらも,積極的に他国と貿易協定を結んでおり,特にEPAを結んで幅広い面での経済連携をおこなおうとしている。近年ではTPP11や日欧EPA,RCEPのような多国間での貿易協定も増えている。
問い 自由貿易協定の影響をふまえて,日本の自由貿易協定への取り組みは今後も継続していくべきか,考えよう。
【解説】 自由貿易を進めるのか,それとも保護貿易を進めていくのか,非常に難しい問いである。両者の利点と課題を整理することが必要であろう。自由貿易を進めれば,国内産業の競争や日本企業の海外進出が促進され,消費者にとっても外国製品が安価になれば利益がある。他方,日本の農業のように,大きな影響を受ける産業があることはいうまでもない。一方で,保護貿易を進めれば,国内産業の衰退などをある程度防ぐことができ,食糧安全保障の観点からも国内産業の育成は重要である。他方,国内の競争が疎外され,外国企業との競争という点では厳しい立場となる。第二次世界大戦後,戦前の世界恐慌を受けた保護貿易が戦争の一因となったとして,世界貿易機関(WTO)が設立された。一方で,トランプ前アメリカ大統領のように保護貿易を訴えることも,戦後繰り返されてきた。自由貿易と保護貿易を比較するだけでなく,その背景にある政治的要因等も考えてみよう。