(オーストラリア・ブルーマウンテンズ)
鈴木 崇雄 さん
Belltree Australia PTY LTD 代表
■オーストラリアで農業をするようになったきっかけは?
広大な自然の中で農業をやりたいと思い,1991年にオーストラリアへ移住し,日系企業の農場で従業員として働きました。そして2006年に,シドニーの西にあるブルーマウンテンズ国立公園近辺のメガロンバレーで,和牛農場の経営を始めました。現在は,繁殖牛(繁殖のために飼育する牛)を60頭,肥育牛(肉質向上を重視して飼育する牛)を120頭飼育しています。
■仕事の内容は?
肥育牛には朝夕2回の給餌や牛舎の清掃などを行い,放牧地で管理している繁殖牛には牧草地の手入れや出産の確認などを行います。オーストラリアの大規模農場で効率の良い機械的な管理システムを学びましたが,和牛の飼育には日本式のきめ細やかな管理技術が必要だと実感しています。
■オフタイムの過ごし方は?
オーストラリアでは休日は家族で過ごすことが多いです。我が家は子どもたちが牧場で乗馬をするので,よく乗馬の競技会やイベントに出かけています。オーストラリアでは馬を使って牛を集めたり,移動したりするので,乗馬人口が多く,週末はあちこちで乗馬の競技会が開かれています。
■オーストラリアのいいところは?
オーストラリアは比較的自由な国で,農地の取得や起業などが簡単にできます。また,伝染病がないため農産物の安全が世界的に評価されています。子どもの教育面では,小学校低学年から生徒の意見や主張を取り入れた授業を多く行っており,子どもの意思や個性が生かされていると感じます。進路は自分のやりたいことやなりたいものを中心に決めていく傾向があるため,大学進学率は高くなくても,進学する生徒は明確な目的を持っているように感じます。
■今後の目標は?
日本ではなくオーストラリアで和牛を育てることで,アメリカやヨーロッパの生産者も和牛に興味を持ってくれています。今後もオーストラリアで一番の和牛肉を生産することで,日本の和牛のすばらしさをオーストラリアや世界の人々に伝えていきたいです。
■高校生に伝えたいことは?
私は23歳でオーストラリアに移住し,英語も話せずに,片田舎で16年間仕事をしました。言葉や習慣は「習うより,慣れろ」です。自分に壁をつくっていると人は近づいてきませんが,飛び込んでいく気持ちがあれば,喜んで助けてくれます。私は日本を離れて初めて,日本の良い所と悪い所が見えました。みなさんも機会があればぜひ海外に出てみてください。そうすることで,自分のいた場所の良さや悪さを知ることができるでしょう。