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音楽に国境はない!

(スイス・ベルン)

小倉 直子 さん

ベルン交響楽団

■仕事の内容は?

 シンフォニーコンサートを開催したり,国立歌劇場のオペラやバレエ公演で演奏を行ったりしています。各公演では,午前中か夜に数回のリハーサル(全体練習)が組まれます。空いている時間は個人練習をします。

■仕事で苦労した面は?

 オーケストラの団員は多国籍で母国語も様々です。リハーサルは基本的にドイツ語で行われ,指揮者によっては英語やフランス語が使用されることもあります。言葉は違っていても舞台上に国境はなく,「万国語」である音楽を通してみんなが一つになれます。これは音楽の素晴らしさだと思います。一方で,演奏以外の運営や企画,労働組合に関する話し合いや問題解決の際には,外国語で自分の意見を発言することが求められます。日本人の「場の雰囲気を読む」という感覚はヨーロッパでは通用しないため,順応するのに時間がかかりました。

弦楽四重奏団「クセナキス弦楽四重奏」のメンバー

■オフタイムの過ごし方は?

 私の所属するオーケストラは,比較的自由にシフトを交代することができます。私は10日間,2週間と休みなく働く代わりに,まとめて2,3週間休みを取っています。その休日を利用して,ヨーロッパ各地や日本へ旅行しています。スイスは地理的にヨーロッパの中心に位置し,近隣諸国へのアクセスが非常に便利なため,気軽に海外旅行ができます。エジプトの紅海でスキューバダイビングのライセンスを取得した旅は今でも忘れられません。

■スイスのいいところは?

 素晴らしい大自然です。辛いことがあった時,アルプス山脈の広大な景色や,蛇行するアーレ川の流れに幾度となく励まされました。生活水準も高く,比較的治安が良いところも魅力の1つです。

■高校生に伝えたいことは?

 私は日本の芸術大学を卒業してドイツの音楽学校に留学するまで,日本から出たことがありませんでした。片言の英語とドイツ語だけでスタートしたヨーロッパ生活で,数えきれないほどの失敗をしましたが,多くの人に助けられました。目標に向かって一生懸命努力すれば,いつか報われます。辛い時や壁にぶつかった時は,1人で殻に閉じこもらないで,勇気を持って助けを求めてみてください。そうすれば,問題が解決するだけでなく,人生がより豊かになることと思います。