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連載 「情報」の授業をより楽しく
エデュカーレNo.30より

実践事例「音入り全自動紙芝居」 愛知県立瑞陵高等学校教諭 福田 健治

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僕がおこなった授業のうち,「音入り全自動紙芝居」について紹介します。これは,愛知県立中村高校において,「情報A」(1年生で2単位)の2学期末から3学期前半に,15時間(うち3時間は生徒の発表)を使っておこなったものです。



1. ねらい ↑UP

PowerPointのアニメーション効果を有効に使った「音入り全自動紙芝居」の作成を,僕は情報の授業の最後の課題にしています。PowerPointには,アニメーション効果という素敵な機能が入っています。これを使うと,わくわくする作品をつくることができるのです。

この課題では,1年間「情報」の授業で学んだ多くの技術を使います。絵を描き,スキャナで読みこみ,ペイントソフトで色をつけ,一部を透明化させ,PowerPointに挿入しアニメーション効果を使います。人物や動物を動かしたり,向きを変えたり,回転させたりして,動きを完成させます。フキダシをつけ,マイクつきヘッドセットを使って解説や話し言葉を録音します。すべて作業が終わったところで,全部を自動化します。これで,ボタンひとつで自らつくった作品が,全自動で動き出すことになります。

自分で描いた動物や人物が,自分でつくったストーリーの中で,動きながら会話をします。まさに,アニメの監督になった気分を味わうことができます。つくった本人は大きな充実感を得ることができますし,それを見たまわりの生徒たちは深い感動を得ることになります。そう,「情報」の授業では,喜びや感動を得ることができる!そんな授業が生徒のやる気を引き出すのだと思います。とてもやりがいがあります。「音入り全自動紙芝居」の作成は,生徒を引きつける魅力が十分なテーマです。



2. 準備 ↑UP

この課題をこなすためには,多くの他の技術の習得が必要です。描いた絵を取りこむスキャナの技術,取りこんだ絵を加工するペイントソフトへの理解,コンピュータへの負荷を下げる画像解像度への理解,色をつけるだけでなく,動かす動物や人間の背景を透明化することへの理解,PowerPointでのアニメーション効果やナレーション挿入への理解,時には他の音データの保存形式などへの理解が必要になります。

僕は事前に,物語を書く用紙や作画の用紙の準備をします。透明化やアニメーション効果,音声入力方法の説明プリントを準備します。必要な機材は,スキャナとマイクつきヘッドフォンです。授業をおこなった中村高校ではスキャナを10台,USBマイクつきヘッドフォンを40台準備しました。生徒には,この課題に取り組ませる前に,他の課題でスキャナの使用,ペイントソフトの使用,PowerPointの使用を体験させています。



3. 実践内容 ↑UP

■導入の作例「バオバブの木」

まず,最初に僕の作品を見せて動機づけをします。次のページに,僕がつくった作品を載せました。これを導入に使っています。

僕は青年海外協力隊に加わり,西アフリカのリベリアで,学校の先生を育てる大学で教えたことがあります。これは,僕がつくったアフリカのバオバブの木の物語です。なかなか花を咲かせないバオバブの木があります。少年は動物たちに,あるお願いをします。動物たちの協力で,ついに花が咲くという物語です。

フキダシにあわせて声が入り,動物たちが動き回ります。生徒たちは,単純なストーリーでもにこにこしながら鑑賞してくれます。ここで,作業の手順について説明します。ストーリーをつくること,背景画や登場人物を描くこと,PowerPointの上で動きをつけ音声をつけることなど,作品をつくる上での基本的な説明をします。

導入で見せる作例

 画像をクリックすると別ウインドウで閲覧できます。

■先輩の作品を見る

その後,先輩たちの力作を見せると,生徒たちの目の色が違ってきます。先輩がつくった優れた作品を見ることで,自分の内なるエネルギーを感じるのです。僕は彼らの先輩たちの作品を見せながら,この作品のどこが優れているのかをしっかり説明します。これを見ながら,自分はどうするのか。自分の夢の作品をつくりたい。そんな中でつくる喜びを感じはじめるのです。これが生徒のやる気を引き出します。

■テーマの見つけ方

この課題を生徒に提示すると,関心のある生徒たちは,すぐに自分の世界に入りこみます。思案を重ね,時間をかけて作品をつくりはじりめます。一方,どうしてもアイデアが思い浮かばない生徒もいます。そんな生徒には,ヒントとしてインターネット上のウェブサイトをいくつか紹介します。

■制作にかける時間

この課題でいちばん問題となることは,スケジュールです。この課題は内容がとても豊富なので,時間もかかります。僕は発表時間にまにあわせるために,必ず毎回スケジュールを確認させます。一方で,僕は優れた作品をつくらせたいこともあり,生徒の自主的な作成の時間を十分に取らせたい希望ももっています。そこで,僕はこの課題を2学期と3学期にまたぐ形で取り組ませています。そうすると,冬休みを返上して大作をつくろうとする生徒がでてきます。評価をする上で,同じ時間作業をさせて競いあわせるという方法もありますが,僕はそれを好みません。僕は,発表までにどれだけ優れた作品をつくることができるかを授業の基本にしています。ただし,スケジュールに遅れることは,認めません。

時間内容
1.5物語を考える。原案を提出する。
1.5背景の輪郭だけを紙に描く。
2登場人物・動物の輪郭だけを紙に描く。
紙を使わず,コンピュータ上の作画も可。
2スキャナで読みこみ,着色や透明化をする。
3PowerPointに絵を読みこむ。
人物・動物の動きをつける。
2フキダシの挿入,音声をつける。提出。
3鑑賞と評価をおこなう。
作成のスケジュール (各生徒に,スケジュールの前倒しは許可している。)

■作業の仕方

僕の授業では,基本的に作業を僕のプリントにしたがっておこなうようにさせています。プリントを読み下し,自分で作業をするよう指導します。もちろん,必要なときは全体に説明をすることもありますが,極力その形式を取らないようにしています。これは,コンピュータを使う作業の場合,人によって理解力も処理のスピードも違いすぎることや,口で説明しすぎると,それについて来られない生徒はパニックにおちいり,作業がストップしてしまうからです。ですから,僕はプリントを読めばわかるように,注意をはらって丁寧にプリントづくりをします。生徒は,わからなくなったら,常にプリントにもどるように指導します。この方法のほうが,作業を個々のペースで,時間を有効に進めることができると考えています。



4. まとめ ↑UP

この「音入り全自動紙芝居」の課題は,多くの学習要素をもつ,とても魅力ある課題です。各自の制作に関する計画性や創造性が問われます。作品発表では友達の個性への理解を深めることもできます。大きな課題であるがゆえに,生徒の総合力が顕著にあらわれます。

生徒がつくる作品は,ほんとうに色々なジャンルにわたります。宇宙へ飛び立つ物語,卵の冒険,流行の歌詞からつくった物語,古い機関車の物語,日本昔話,イソップ物語,冒険物,事件物,とんち物,スポーツ物,時代物などなど…。ナレーションでは,声の種類を使い分けたり,昔話のおじいさんの口調で語ったりと味のある演出をみせてくれます。どんぐりがころころ転がったり,涙があふれてきたり,刀や槍が飛んできたり,動物が走り回ったり,人物が小さくなりながら家の中へ入っていったり,色々なアニメーション効果を効果的にみせてくれます。色々な工夫を満載させた作品は,つくる側も見る側もわくわくした気持ちにさせます。色々な生徒の個性やこだわりを見ることのできる課題。どこまでも深く掘り下げることのできる課題。まさに,胸躍る課題をつくることができたことに,僕自身,充実した気持ちを感じています。

次のページで生徒の作品を紹介します。


生徒による作品例1

 小学校低学年の子どもの「夏休みの絵日記」がテーマの作品です。夏休みにあった色々な出来事の日記を書いています。日記を書く手が動き,その後で思い出の色々な絵が浮かび上がってきます。さいごに,心温まる贈り物が待っています。とても素敵な作品です。


生徒による作品例2

 生徒が創作した「黒猫物語」です。わがままな王子が黒猫に変えられ,色々な経験をする中で,たいせつなものは何かを悟っていく場面が,丁寧につくられています。人物の影のつけかた,猫の表情なども,プロ級だと思います。


生徒による作品例3

 これは,新見南吉の「手袋買いに」です。可愛らしい子ぎつねが,手袋を買いに行きます。間違えて,きつねの手を出した子ぎつねに,人間は手袋を売ってくれます。温かみのある絵が印象的です。



5. さいごに ↑UP

僕の授業についての報告は,今回で終わりです。子どもたちの将来において,コンピュータを使いこなせるようになることは,とても重要なことです。そのために必要な力をしっかり身につけさせられる教材づくりが,今後ますます求められるでしょう。



参考資料 ↑UP

「情報の授業をより楽しく」福田健治1,500円(送料別)

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