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連載 「情報」の授業をより楽しく
エデュカーレNo.28より

実践事例「アンケート分析」 愛知県立瑞陵高等学校教諭 福田 健治

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僕がおこなった授業のうち,「アンケート分析」について紹介します。

これは,前任校の愛知県立中村高等学校において,「情報A」( 1年生で 2単位)の 1学期後半に,12時間(うち4 時間は生徒の発表)を使っておこなったものです。



1. ねらい ↑UP

表計算ソフトウェアを使うことは,情報の授業のなかでもたいせつなテーマの1 つです。これを使いこなし,意味あるものにするには,ただ計算をさせるだけではおもしろくありません。計算をさせるだけでは,生徒の個性が出ないからです。全員が同じ結果を出す課題では,意味がありません。では何をするか。アンケートです。しかし,記述式のアンケートではいけません。分析に限界ができてしまうからです。選択問題がいい。深く分析するには五択くらいはほしい。さらに,分析上,男女については聞いておいたほうがよい。うまくいけば,ピポットテーブルでクロス集計をおこなわせることもできる。こんなアイデアが僕の頭のなかで広がっていきました。

ここで生徒は,自分の研究テーマを決め,アンケートの質問と適した解答群をつくり,アンケートを取り,集計し,Excelを駆使してデータ分析やグラフ作成をおこないます。その結果に考察を加え,プレゼンテーションソフトウェア(PowerPoint)でまとめ,全員の前で自分のテーマの研究発表をおこないます。



2. 準備 ↑UP

事前にExcelについての基本的な説明と作業を1時間,基本的な関数を使った作業を1時間おこない,Excelの基本的な使い方を把握させておきます。

なお,PowerPointは別の課題ですでに経験済み。

そのほか用意するものは,アンケート用紙(下参照)および分析方法プリント。

配布するアンケート用紙の例


3. 実践内容 ↑UP

■1年目の失敗

1 年目,僕は生徒に「自由テーマ」でアンケートの集計をさせました。その結果は,散々なものでした。生徒が決めるテーマはごく限られた範囲のものだけで,見るもの見るもの同じような発表になってしまったのです。これではいけない,何か方法はないのか。悩んでいると,同僚の先生(家庭科と情報を担当)が僕のアンケートの授業をみて,自らもアンケートの授業をされました。このとき「料理」をテーマにされたのです。「これだ!」僕は,直感しました。生徒を取り巻く世の中のありとあらゆるテーマを拾い出そう。そのなかから1つのテーマを選ぶ方式にすることで,このアンケート分析をしっかりとした授業案にすることができる!この授業案は完ぺきなものになる!そう考えました。そして,生徒どうしが同じテーマを選択することは認めないことにしました。同じテーマだと,生徒どうしが情報交換して同じようなものになったり,自分のアイデアが他人に使われたりと,おもしろくない問題も発生してしまうことを心配したからです。同僚の先生にテーマ方式を使わせていただきたいとお願いし,承諾を得ることができました。このようにして,今の僕のアンケート分析の授業スタイルを完成させることができました。

■72のテーマと集計用紙

この課題では,僕は72のテーマを前もって準備しています。そして,生徒にそのなかから1 つを選ばせることにしています。テーマを決めた後,集計用紙を渡し,そのテーマに関する質問を5 つつくらせます。それぞれの質問は五択でおこなわせ,分析の形式上,回答はすべて選択でおこないます。また, 5 つの質問以外に,男女を問う質問が加わります。分析を興味あるものにするには,なるべく二択の問題は避けるよう助言します。できたアンケート用紙を回し, 1 時間かけてクラス全員の回答を記入させます。

 1.友達  2.恋愛  3.結婚  4.異性  5.好きな番組  6.国内旅行  7.海外旅行
 8.勉強  9.進路 10.フリーター 11.大学 12.理系文系 13.受験 14.音楽
15.アニメ 16.化粧 17.環境問題 18.車 19.家族 20.宇宙 21.部活動
22.戦争 23.性格 24.中村高校 25.睡眠・夢 26.スポーツ 27.サッカー 28.野球
29.老い 30.若さ 31.癌 32.宗教 33.芸能人 34.料理 35.人生
36.ゲーム 37.コンピュータ 38.ボランティア 39.趣味 40.劇ミュージカル 41.お菓子 42.国連
43.アメリカ 44.中国 45.韓国 46.インド 47.小説・作家 48.外国人 49.日本人
50.血液型 51.iPad 52.格差社会 53.占い 54.将来の仕事 55.国際化 56.血液型
57.映画 58.幸せ 59.歴史 60.温泉 61.原子力発電 62.お金 63.ペット
64.生きがい 65.海・山 66.携帯電話 67.いじめ 68.東日本地震 69.英語 70.ブログ
71.好きな教科・嫌いな教科の理由 72.好きな先生の条件・嫌いな先生の条件
「72のテーマ」テーマはこのなかから選ばせる

■生徒の発表の質をあげる

生徒がテーマを決めるときには,先輩たちがつくった優れた作品を必ず見せることにしています。これが生徒のやる気を引き出し,さらにいいかげんな作品をつくらないようにさせる大事なテクニックになります。僕は先輩たちの作品を見せながら,この作品のどこが優れているのかをしっかり説明します。とくに,アンケートの質問のつくり方や集計結果をどう分析するのかが大事なポイントであること,発表時のスライドのグラフの隣に必ず自分の分析を載せるよう,生徒に確認をいれます。

■アンケート分析

集計結果は,Excelを使って分析します。Excelで表をつくり,人数を集計し,パーセント集計に変換し,これをグラフ化します。これらの作業は,僕が用意した「分析方法プリント」にしたがっておこないます。プリントを読み下し,自分で作業をするよう指導します。結果が出た時点で,どうしてそうなったのかを必ず分析させます。また,クロス集計をすると,おもしろい分析ができることも,例をあげて知らせておきます。すると,意欲的な生徒たちがクロス集計に挑戦してきます。

■研究発表

PowerPointでみんながおこなう発表は,とても楽しいものになります。発表を見ていると,現在の高校生の関心を幅広く分析することができます。また,生徒どうしにとっても,広い話題で自分たちの世界を知ることができることは,とても魅力のあることです。クラスのみんなはどんなことに関心をもち,それぞれアンケートの質問にどんなふうに答えたのか。発表する側も,聴く側も,興味津々です。

以下に,生徒の作品例を1つ紹介します。


生徒の作品例

若いときは,自分の性格について悩むものです。本人はまず「自分の好きなところ」をみんなに聞き,多くの生徒が自分ではわかっていないということを見つけました。これに対し,「自分の嫌いなところ」に関しては,多くの生徒が自分で理解していることも見つけました。これはとても興味深いことです。さらに次の質問で,自分から他者に目を向けます。「相手の許せないところ」を聞くことによって,逆説的に,他者から見た「性格として悪いところ」を認識し,さらに「こんな大人になりたい」の質問から,他者から見た「性格としてこうありたい」ところを認識しようとしています。このアンケートを取ることで,自己中心的で常識がない性格が嫌われ,常識があり優しい性格が好かれ,そのようになりたいと多くの人が望んでいることを見つけました。質問に無駄がなく,全体を見渡せる,とても優れたレポートだと思います。



4. まとめ ↑UP

この事例からわかるように,僕はアンケートを取りあげることで,表計算ソフトウェアの学習と情報の収集・加工・発信が効果的におこなわれ,生徒どうしが多くのことを学べる教材ができたと考えています。



参考資料 ↑UP

「情報の授業をより楽しく」福田健治1,500円(送料別)

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