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連載 「情報」の授業をより楽しく
エデュカーレNo.28より

第1回 僕のめざす情報の授業教育論
                 実践事例「アンケート分析」
愛知県立瑞陵高等学校教諭 福田 健治

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1. はじめに ↑UP

普通科高校で教科「情報」を教えるようになって10年がたちました。ゼロからつくりあげることができる授業。当初,僕はとてもわくわくしたのを覚えています。授業をはじめる1年前から,「コンピュータで何ができるのか?どんなことをしたら,生徒たちが喜んでくれるのか?どんな課題をつくれば,コンピュータの基本技術を網羅できるのか?」を考えはじめました。授業をするわけですから,当然,時間に限りがあります。コンピュータ言語を教えてから,生徒が独自の作品をつくるような十分な時間は,普通科高校にはありません。しかし,「短い時間のなかで,生徒みんなに同じことをやらせる」ことは,僕の頭のなかにはありませんでした。



2. 僕のめざす情報の授業 ↑UP

僕のめざす授業のコンセプトは,「コンピュータを使って同じプログラムや文章を打ちこむのでなく,同じ色の同じ内容の作品をつくるのでなく,みんなの個性が出る,みんなの発見がある,異なった作品をつくること。また,それらの作品は,それぞれにやりがいがあり,深みがあること。作品を各個人がみんなの前で発表できること。さらに友だちの発表を見て,刺激を受けたり感動したりできること。」です。

限られた時間のなかで,基本操作を習得しながら,いかに個性を発揮した作品をつくらせられるか。そして,それをお互いに見せあい,刺激しあい,成長しあえる,そんな授業をつくりたい。こんな視点で,僕は年間数テーマの課題に取り組んできました。



3. 正解を求める減点の発想から,創造してゆく加点の発想へ ↑UP

「情報」の授業は,今までにない新しい発想で取り組める可能性を秘めています。これまでの日本の授業では,試験に穴埋めや計算問題が多く出題されてきました。そして採点は,ただ1つの正解を得たかどうかが問われてきました。でも,正解のない授業,どこまでも掘りさげることのできる授業があってもいいですよね。「情報」の授業では,方法を考えれば,それを追求することができます。「みんなが異なるアイデアを出せる授業」「生徒ひとりひとりが違った個性で違った作品をつくることができる授業」「違った個性を認めあうことから,自分の個性を広げられる授業」これは今までの授業にない,とても大きな魅力です。



4. 自らつくった作品を,みんなの前で発表する ↑UP

僕は,授業のなかで「すべての作品を,みんなの前で,生徒自らプレゼンテーションをおこなう」ことにこだわっています。なかには,発表の苦手な生徒もいますが,「少しずつ成長していってくれればよい」との考えで,1年間いろいろな作品を発表させ続けます。生徒は自らの作品をスクリーンに映し出し,マイクや指示棒を使って説明します。ほかの生徒は,拍手で応えます。



5. 評価は生徒と教師で ↑UP

僕の情報の授業では,生徒も評価者に加わります。よく考えてみると,計算問題や穴埋め問題なら答えはほぼ1つに決まるでしょう。しかし,本の解釈の仕方も人によっていろいろあるでしょうし,歴史から何を学ぶかもいろいろな視点があるように思われます。つまり,○や×だけの発想では,物事を見る視点が狭くなってしまうのです。では,どうすればいいのでしょう。僕は,ここに多面的な評価を入れるべきだと考えます。いろいろな評価をさせ,そのうえで考えさせるのです。生徒の評価は,一面「個々の自分勝手な評価でよい」との視点も生みます。自分だけが行動するときには,それでもよいかもしれません。しかし,多くの異なる価値観から評価される場合には,他者の論理を考えることも当然必要になります。自分の作品に対して,他者がどのような評価をくだすのかを考えながら,次の作品づくりに発展させていく。そんなことがわかる授業も,おもしろいのではないでしょうか。



6. BEST5の発表 ↑UP

僕はクラス全員の発表が終わった段階で,自作の集計ソフトを使い,瞬時に生徒の評価を集計し,みんなが選んだ「クラスのベスト5 」の発表をおこないます。生徒たちは,毎回これをとても楽しみにしています。僕は,ベスト5 の発表をしながら,その作品のよかったところをしっかりほめ,みんなで大きな拍手を贈るようにします。とてもうれしい瞬間です。このとき僕は,必ず生徒の名前を出し拍手をすることにしています。名前の出た生徒は,にこにこしながら満足しています。そして心のなかでは「次の作品でも,必ずベスト5 に入ろう!」と闘志を燃やすのです。これは,教師だけの評価より,彼らにとっては大きな意味をもっていると考えています。友だちからの支持を受けたことは,大きな自信を生みます。これがたいせつなのです。



7. 生徒からの評価 ↑UP

僕は1年の最初と最後に,授業に対してのアンケートを取ります。下の表は,最後のアンケート結果の一部で, 5クラスの平均値で示してあります。この年におこなった課題のなかで,評価が高かったものは「自己紹介」と映像系の「GIFアニメ」「写真加工」「紙芝居」です。これらは,肯定的な値が,否定的な値のほぼ2.5倍に達しています。

「紙芝居」などはかなり手がこんでいて時間も気力も必要なのですが,やりがいが大きいことや,いまどきの若者の心をつかむ要素を多数もっていると考えられます。「自己紹介」は自分を表現すること,友だちを知ることが楽しかったのでしょう。

これに対し,話題が固い「アンケート分析」「職業調べ」は少し支持が落ちますが,それでも肯定的な値が,否定的な値のほぼ2倍に達しています。授業としても,十分に生徒の気持ちを引きつけたと言えるのではないでしょうか。

さて次に,僕の授業形式に対する評価を見てみましょう。結果からわかることは,自分で発表することは恥ずかしいけれど,友だちのプレゼンテーションを見ることは楽しく,互いに評価しあうことに関心をもち,さらに「クラスのベスト5 」の発表はとても待ち遠しい!こんな姿が見えてきます。僕の授業中のプリントや説明は, 8 割以上の生徒が支持をしてくれました。また,先輩がつくった優れた作品を見ることは,7 割の生徒が「参考になった」「ためになった」と評価しています。

僕の授業中のプリントや説明は, 8 割以上の生徒が支持をしてくれました。また,先輩がつくった優れた作品を見ることは,7 割の生徒が「参考になった」「ためになった」と評価しています。

とても興味ありふつう興味なしつまらん
授業内容自己紹介15284593
テーマ別アンケート集計143036154
GIF アニメ202933117
職業調べ(Web ページ作成)172342136
写真加工232730174
カレンダー作成92146176
紙芝居242434136
 
おもしろいふつうつまらん恥ずかしい
授業形式プレゼン形式発表(自分)1745731
友だちのプレゼンを見る524072
友だちの評価355483
クラスのベスト 5543781
goodbad
先生のプリント8515
先生の説明8020
先輩の作品を見る7030
携帯電話と規律7624
教科「情報」アンケート結果(1年生) 5クラスの平均をとったもの


8. 生徒の意欲を引き出す ↑UP

 「情報」の授業は,「コンピュータを学習するのではない」「ソフトウェアの使い方を学習するのではない」と言われます。また,「情報」の授業は,「情報の収集」「情報の加工」「情報の発信」であるとも言われます。魅力あるテーマで生徒をわくわくさせ,作業のなかでコンピュータを使うための実力もつけさせる。そんな授業をつくりあげていくことが,僕ら教師の喜びであり,僕ら教師に求められていることだと思います。


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