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連載 中学校での情報教育
エデュカーレNo.19より
第1回 中学校の情報教育はどのような教科書を使っているのだろう?
第2回 中学校ではどのような授業がおこなわれているのだろう?
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第3回 中学校ではどのような情報教育が求められているのだろう?
学校イラスト
 前回は,中学校の各学年の授業時数や,「情報とコンピュータ」の学習指導要領における内容や教科書の構成を みてきた。今回は,それらをもとに,実際に中学校でどのような授業がおこなわれているかを紹介したい。
 「技術」担当の先生などにお話をうかがうなかで,中学校の状況や情報教育の課題がみえてきた。
<1年>情報とコンピュータ
4月生活とコンピュータのかかわり
コンピュータの基本操作
5月インターネットの利用・注意点
情報検索・情報収集
6月ワードプロセッサの利用
(文字入力,文書作成)
7月ペイントツールの利用
ワードプロセッサの利用
(図の貼り付け)
9月
10月
表計算ソフトウェアの利用
(データ入力・関数の利用・グラフの作成など)
11月電子メールの利用
12月著作権
図形処理ソフトウェアの利用
1月
2月
アプリケーションソフトウェアを統合した作品の制作
3月作品の発表
<2年>技術とものづくり
<3年>技術とものづくり・情報とコンピュータ
4〜12月技術とものづくり
1月
2月
マルチメディア作品の制作
(ウェブサイト・プレゼンテーションなど)
3月作品の発表
表1 3年間の「技術」の流れの例
「技術・家庭」の「技術」分野は,「A 技術とものづくり」 「B 情報とコンピュータ」という内容に分けられるが,「生徒の創意工夫を生かした作品制作をおこなう」ことを重視する点は共通している。
 高校の普通教科「情報」の内容にもっとも近い,中学校「技術」分野の「情報とコンピュータ」の授業の流れをみて みよう。複数の技術担当の先生にうかがったお話をもとに作成したのが,表1の「3年間の『技術』の流れの例」である。
▼1年時に「情報とコンピュータ」を学ぶ
 中学校3年間で,「技術・家庭」にあてられた時数は175時数である。この時数を,どのように配分するかは各学校にまかせられている。 1年時に「情報とコンピュータ」を学んでいる学校には,「総合学習や他教科でのコンピュータの使用にそなえて」という考えもある。
▼アプリケーションソフトウェアの利用
 ワードプロセッサ・表計算ソフトウェア・図形処理ソフトウェアなどが使われている。 高校ではMicrosoft Officeを導入している学校が多いが,中学校では(株)ジャストシステムの「ジャストジャンプ」, 鈴木教育ソフト(株)の「キューブNext」などを使用している学校もある。 これらは,コミュニケーションツールや作品制作のための素材などもそなえた教育用統合ソフトウェアである。 実際に社会に出てこれらのソフトウェアを使用することは少ないが,「ソフトウェアの操作を学ぶのではなく, コンピュータを活用して問題解決(作品の制作など)をすることを重視した」点から選ばれている。
▼情報モラル教育
 作品制作のなかで適宜取り上げたり,県警の担当者によるサイバー犯罪に関する講演をおこなったりして, 情報モラルの理解を深めている。中学校でも情報モラルへの関心は高く,とくに携帯電話(中学校でも多くの生徒が もっている)の使い方と,いわゆる「学校裏サイト」が憂慮されている。これらの問題への取り組み には家庭の理解が欠かせないため,保護者向けのプリントを作成する学校もある。
▼マルチメディア作品の制作
 3年間の「技術」のまとめとして,学習指導要領の「情報とコンピュータ」の選択項目にあたる, 「マルチメディアの活用」や「計測・制御」をおこなう学校も多い。学校生活についてのプレゼンテーションをおこなったり, プログラムを作成してロボットを動かしたりと,内容は学校によってさまざまである。
▼選択「技術」
 中学校では各学年で選択教科の時間が設けられている。希望者のみが受ける選択「技術」では, 必修「技術」よりも発展的な内容をおこなっていることが多い。「情報とコンピュータ」に関する内容では, アニメーションGIF・Flash によるアニメーション・CGI などのプログラムを使ったウェブサイトの作成や, 海外の学校との電子メールのやりとり,制御系ロボットの制作などの実習例が聞かれた。
技術の先生方の声  このように,「技術」ではコンピュータなども活用した情報教育がおこなわれているが,情報教育は「技術」だけでおこなうものではない。 2006年8月に文部科学省から「初等中等教育の情報教育に係る学習活動の具体的展開について〜すべての教科で情報教育を〜」という報告書が公開され, 国全体で情報教育に力を入れる姿勢が示されたが,一部の積極的に取り組んでいる学校を除き,十分な情報教育がおこなわれているとは言いがたい状況である。
 この原因の1つとして,「情報教育=コンピュータを使用した教育」という誤解があるのではないだろうか。 実際は,表2でも例をあげているようにコンピュータを使わなくても情報教育は可能であり, また,コンピュータなどの情報機器を活用すれば情報教育であるというわけでもない。しかし,上記のような誤解のために, 情報機器の操作に抵抗感をもつ教員は情報教育を避け,結果的に生徒の情報活用能力が育成されないという悪循環に陥っているとも考えられる。
 コンピュータはあくまでも情報を活用するための道具の1つとして,コンピュータを使わないことも含めた情報教育を学校全体でおこなう必要がある。 これは,高校にも求められている姿勢である。

 ●情報活用の実践力●

国語

自分の進路に対する考え方をまとめるために参考資料をいろいろな手段で収集し,それを効果的に使って発表する。

社会

インターネットを利用して日本の少子化について調べ,数値的データにもとづく現状の分析と,社会におよぼす影響についてまとめる。

美術

ディジタルカメラやディジタルビデオカメラなどで撮影したデータを組み合わせて「15歳の私」というテーマで作品をつくる。
 ●情報の科学的な理解●

数学

複雑な数値計算をおこなう場面で,電卓のメモリ機能を使って効率のよい計算をおこなう。
 ●情報社会に参画する態度●

保体

コンピュータの使用時間,目の疲れ,肩こりの有無などについてクラス内でアンケート調査をおこない,これらの関連性を調べる。

技術

身の回りの事例から,社会が情報化したことで便利になったことと,不便になったことについて調べる。
表2 文部科学省「初等中等教育の情報教育に係る学習活動の具体的展開について
〜すべての教科で情報教育を〜」
情報教育に関係する指導内容および学習活動例(中学校)抜粋
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