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連載 中学校での情報教育
エデュカーレNo.17より
第1回 中学校の情報教育はどのような教科書を使っているのだろう?
<INDEX>
第2回 中学校ではどのような授業がおこなわれているのだろう?
第3回 中学校ではどのような情報教育が求められているのだろう?
学校イラスト
 家庭や学校でのパーソナルコンピュータの普及により,パーソナルコンピュータをまったく操作したことのない 生徒が高校に入学してくることは少なくなった。しかし,家庭でのパーソナルコンピュータの利用は,インターネ ットやディジタルカメラで撮った写真の編集など,個人の趣味や興味に応じて偏ってしまうことも多い。ワード プロセッサや表計算ソフトウェアを活用して文書をつくったり,コンピュータのしくみや情報モラルについて学 んだりするには,やはり学校での学習が不可欠である。
 現在の生徒は,小学校の「総合的な学習の時間」や中学校の「技術・家庭」で,パーソナルコンピュータの操作や 情報モラルについて学ぶ。活発な学校の取り組みは,さまざまな研修会などで実践報告として紹介されている。 しかし,実際にはどのような形で授業がおこなわれているか,知る機会はまだまだ少ないのではないだろうか。
 今回の連載では,中学校での情報教育を取り上げたいと思う。普通教科「情報」(以下「情報」と示す)は高校1年 生で履修する学校も多く,中学校で学んだ内容は高校での学習に大きく影響してくると考えられる。学習指導要 領改訂を目前に控え,中学校での情報教育について知ることは,「情報」の今後について考える1つのヒントとな るのではないだろうか。
 中学校での情報教育は,おもに「総合的な学習の時間」や必修教科の「技術・家庭」で扱われている。「技術・家庭」 の「技術」分野は「A 技術とものづくり」「B 情報とコンピュータ」にほぼ2等分され,Bが「情報」につながる内 容となっている。
 表1は,中学校の学習指導要領(1998年告示)における各学年の授業時数を示している。これを見ると,「技術・ 家庭」は3年間で175時数設けられているが,「B 情報とコンピュータ」に対する授業時数は, その約4分の1の44時数程度となる(学習指導要領では,「技術・家庭」の授業時数の区分は具体的には定められていない)。

区分 必修教科の授業時数




















第1学年 140 105 105 105 45 45 90 70 105 170 980
第2学年 105 105 105 105 35 35 90 70 105 225 980
第3学年 105 85 105 80 35 35 90 35 105 305 980
表1 学習指導要領における各学年の授業時数

 表2は,学習指導要領における「B 情報とコンピュータ」の内容と「情報」の内容を比較したものである。これを 見ると,「情報」の内容はひと通り「情報とコンピュータ」で扱われている。

中学校学習指導要領の内容 高校学習指導要領との対応
必修 (1)生活や産業の中で情報手段が果たしている役割 (4) (4) (4)
(2)コンピュータの基本的な構成と機能及び操作 (4)    
(3)コンピュータの利用 (1),(3) (3) (1)
(4)情報通信ネットワーク (1),(2) (1) (2),(3)
選択 (5)コンピュータを利用したマルチメディアの活用 (3) (2) (1)
(6)プログラムと計測・制御   (2),(4)  
表2 学習指導要領における「情報とコンピュータ」の内容と「情報」の内容(番号のみ)との比較
 「技術」分野の教科書は,現在東京書籍(『新編新しい技術・家庭技術分野』)と開隆堂(『技術・家庭技術分 野』)の2社から発行されている。表3は,その2冊の教科書の内容・学習指導要領との対応について示したもの である。この表をもとに,もう少し詳しくそれぞれの教科書を見ていこう。
表3 「技術」教科書の内容と学習指導要領との対応
※「指導要領との対応」項目の番号は,表2で示した(1)〜(6)の番号に対応している。
  目次 ページ数 指導要領との対応 内容例
東京書籍

計90ペ|ジ
  情報と私たちの生活 4 (1)  
  1 コンピュータのしくみと基本操作 14 (2) 五大装置,基本操作,記憶メディアの例
  2 コンピュータの利用 18 (2),(3) 図形処理ソフトウェア,表計算ソフトウェア,ワードプロセッサ,データベースソフトウェアの利用
  3 情報通信ネットワークの利用 14 (1),(4) ウェブページの構造,検索エンジン,電子メール,著作権
選択 4 マルチメディアの活用 16 (5) ウェブページ作成,ディジタルビデオ編集
選択 5 プログラミングと計測・制御 8 (6) プログラムの作成,BASIC の利用,計測・制御の実習
  6 情報社会と自己責任 2 (1) 情報社会,不正アクセス,架空請求
開隆堂

計86ペ|ジ
  情報とコンピュータ      
  1. 情報を活用して生活に生かそう      
 

1 生活とコンピュータのかかわり

4 (1) 身近なコンピュータ,メディアの例
 

2 コンピュータのしくみと基本操作

8 (2) コンピュータの構成,基本操作
 

3 ソフトウェアの機能と情報の処理

8 (3) ワードプロセッサ,図形処理ソフトウェア,表計算ソフトウェア,データベースソフトウェアの利用
 

4 ネットワークと情報の収集

6 (4) LAN・WAN,インターネットのしくみ,検索エンジン
 

5 コンピュータで問題の解決

6 (4) 情報の収集・発信
 

6 電子メールと情報の発信

4 (4) 電子メールの送受信
 

7 情報モラルとコンピュータの利用

4 (1) 情報モラル,個人情報,著作権,不正アクセス
 

8 これからの情報社会

4 (1)  
選択 2. マルチメディアを活用して表現や発信をしよう 20 (5) マルチメディア情報の特徴,プレゼンテーション,ウェブページの作成,動画作品の作成
選択 3. コンピュータを制御に生かそう 22 (6) 計測・制御の実習,プログラムの作成
▼コンピュータ操作の充実
 ログオン・ログオフから,マウスやキーボードの操作,各アプリケーションソフトウェアの操作など, パーソナルコンピュータの基本的な操作について多くのページを割き,丁寧な記述がされている。 文書処理・表計算・図形処理・データベースソフトウェアは必修項目のページで扱われているので,これらは, ひと通り中学生のうちに経験できるということになる。プレゼンテーション・動画処理・音声処理ソフトウェアなどは, 選択項目である「マルチメディアの活用」の部分で取り上げられている。
▼「技術」分野の一部としての意識
 「情報とコンピュータ」は「技術」分野の一部であり,教科書には「技術」の目標である「実践的・体験的な学習活動」や 「技術が果たす役割について理解を深め」る内容が多く含まれている。「情報」ではコンピュータを「問題解決」の道具として扱う意識が強いが, 「情報とコンピュータ」では「ものづくり」の道具として活用している,ともいえる。 その一例として,選択項目である「プログラムと計測・制御」の充実があげられる。たとえばモータカーやロボット, 温度や電力の計測・制御などの例がある。計測と制御の部分は「技術とものづくり」で製作したものと組み合わせることも可能であり, 「技術」のまとめとして扱うこともできる。
 このように,「技術・家庭」の教科書は「情報」で学ぶことをひと通り扱い,実践的な実習も充実している。 それは見方を変えれば,理論的な部分は薄くなってしまっているともいえる。パーソナルコンピュータの操作だけではなく, 情報やネットワークの性質をふまえ,ものごとを論理的に考え, 情報モラルに配慮しながら情報を適切に扱えるようになって初めて「情報活用能力」が身についたといえるのである。 その意味で,「情報」で学ぶべきことは中学校と高校の6年間で完成されるといえる。

 次回以降は,実際の中学校での情報教育の状況や,専門家の意見を伺いながら,さらに考えを深めていきたい。
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