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ネットワークから見える“つながり”と本当の自分



インターネットで「つながる」

 文通やラジオへの投稿,パソコン通信など,顔の見えない相手と言葉でつながる文化は以前からあった。インターネットの登場により,つながることのできる相手の範囲は飛躍的に広がり,掲示板・チャット・ブログ・SNSなど,コミュニケーションの形態・密度も必要に応じて選ぶことができるようになった。それは私たちにどのような影響をおよぼしているのだろうか。


1 ネットワークコミュニティとは

 日本でのインターネット利用者は7000万人を超え,インターネットに多くの時間を費やす人も増えている。下図によると,インターネットの利用時間は「1時間〜5時間未満」の回答がもっとも多く,3%程度ながら「10時間以上」という回答もある。これはテレビや新聞・雑誌など,ほかのメディアではあまり見られないことである。インターネットでは,情報収集・電子メール・オンラインショッピングなど,さまざまなことができる。さらに人びとをインターネットに没頭させているものとして,「ネットワークコミュニティ」があるのではないだろうか。
1日あたりのメディア別利用時間
(出典:財団法人インターネット協会監修 『インターネット白書2006』,2006年)

 ネットワークコミュニティとは,おもにインターネット上でおこなわれるコミュニケーションの「場」をあらわしており,その種類はネットニューズ・掲示板・チャット・メッセンジャー・ブログ・SNS などさまざまである。ネットワークコミュニティの特徴を理解したうえで,適切な付き合い方を考えていきたい。


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2 ネットワークコミュニティと匿名性

 ネットワークコミュニティの特徴の1つに「匿名性」がある。これは「名前や職業を明らかにせずに考えやことばを発信できる」ことである。現実社会では,年齢や通う学校,職業などがコミュニケーションのキーとなり,見知らぬ人に突然話しかけるのは難しい。しかし,ネットワークコミュニティでは「趣味」や「考え方」がキーとなり,見知らぬ人とも話をするきっかけが多くなる。ネットワークコミュニティによって,「つながり」の可能性がぐんと広がったともいえる。

 その一方で,匿名性は誹謗・中傷や無責任な書きこみにもつながっている。一般人が個人情報をさらされたり,人気タレントの誹謗・中傷が書きこまれたりする事件が起きているが,犯人を特定することが難しく,被害者の精神的苦痛ばかりが増す事態ともなっている。

 それでは,匿名性という観点からネットワークコミュニティを見たときに,どのような“つながり”が形成され,現実社会にどのような影響をおよぼしているだろうか。次項ではいくつかの種類に分けて見ていこう。


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3 実名? 匿名?

▼伝統的なネットワークコミュニティ ―ハンドルネームでのやりとり

 ハンドルネームはニックネームのようなもので,インターネット普及前の「パソコン通信」から使われており,インターネット上の多くのネットワークコミュニティでもその文化が引き継がれている。

 ハンドルネームは実名でこそないが,同じハンドルネームで特定のネットワークコミュニティに参加して発言していれば,ある人をあらわす名前として立派に成立する。普段の自分とは違う人格になりきって楽しむことができたり,仲間内だけにわかる名前にすることで第三者に本当の自分のことを知られる危険を少なくすることができたりと,ハンドルネームは不特定多数の人が参加できるネットワークコミュニティではなくてはならないものになっているといえる。

▼「2ちゃんねる」 ―多くの「名無しさん」が発言する

 「2ちゃんねる」(http://www.2ch.net/)は,いまやインターネット利用者ならほとんどの人が名前を聞いたこ とのある巨大掲示板だが,否定的な意味で語られることも多かった。その原因の1つに,多くの「名無しさん」による過激な発言があげられる。「名無しさん」とは,ハンドルネームすらもたない発言者に与えられる名前で,「2ちゃんねる」の発言の多くを占めている。不特定多数の「名無しさん」になることで,個人の重みから解放され,無責任な書きこみや過激な発言につながることもある。

 その一方で,「電車男」のような「名もなき多くの人による感動的なストーリー」もある。匿名性のもつ長所や短所を端的にあらわしたウェブサイトといえる。

▼「mixi」 ―招待制による実名の推奨

 匿名でのコミュニケーションが主流であったネットワークコミュニティの世界で,SNS を日本に広めた代表的サイトの「mixi」では,当初実名での登録を推奨していた。招待制のため悪意をもった参加者が書きこみをする危険性が少ないこと,実名での登録により昔の友人との再会ができることなどがおもな理由であった。その結果「mixi」は,これまでのネットワークコミュニティ同様距離や年齢の制限なく気の合う友人を見つけることができるとともに,名前検索によって昔の友人を見つけ,連絡を取り合うことができるようになり,爆発的に普及した。

 しかしユーザ数が800万人を超え(2007年1月28日現在),善意の利用者ばかりとはいえなくなった。現在「mixi」では情報の公開範囲を制限するなど,実名での登録に注意を促すようになっている。


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4 ネットワークコミュニティとの付き合い方

 ネットワークコミュニティでは発言する時間を選択することができ,さらにSNS では情報の公開範囲の設定によって発言の相手を選択することもできる。現実社会のコミュニケーションにくらべて「自分でコントロールしやすい」ことも特徴の1つである。だからといって匿名で誹謗・中傷をおこなったり,場を無視した発言や行動をとることは,現実社会同様許されない。

 一度書きこんだ発言を取り消すことは難しい。書きこむときに,それを読むのは同じ人間であることを意識し,内容も自分でコントロールする必要がある。その意味で,ネットワークコミュニティと付き合うにあたっては,各々の情報リテラシーを高めてのぞむ必要があるといえる。

▼ネットワークコミュニケーションについて考えるための参考書籍

  • シェリー・タークル『接続された心:インターネット時代のアイデンティティ』(早川書房,1998年)
  • アルバート・ラズロ・バラバシ『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』(NHK 出版,2002年)
  • ばるぼら『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』(翔泳社,2005年)



知らない人とつながる〜日本のネットワークコミュニケーションの歴史

1984年 東京大学・慶應義塾大学・東京工業大学を結んだ実験ネットワークとして,JUNET 開始。
  →日本のネットワークのはじまり
「fj」(ネットニューズのトップカテゴリの1つ)開始。
1985年 (株)アスキーが商用パソコン通信ホスト局「アスキーネット」のサービス開始。
  →パソコン通信から,ネットワークコミュニケーションははじまったといってよい。
1988年 チャットシステム「IRC」がヤルッコ・オイカリネンによって開発。
1992年 WWW のはじまり(日本でも利用開始)。
1997年 「あめぞうリンク」(管理人:あめぞう氏)開設。
1998年 ヤフー(株),エキサイト(株)がインスタントメッセンジャーを公開。
1999年 マイクロソフト(株)の無料ウェブメールサービス「MSN Hotmail」が日本語に対応。
「2ちゃんねる」(管理人:ひろゆき氏)開設。
楽天(株),ヤフー(株)がオークションサービス開始。
2003年 ニフティ(株)がブログサービス「ココログ」開始。
  →ブログの登場は多くの人に情報発信の魅力を広めた。
2004年 2ちゃんねる発のラブストーリー「電車男」が話題となる。
(株)ミクシィがSNS サービス「mixi」開始。
2006年 (株)ディー・エヌ・エーがSNS サービス「モバゲータウン」開始



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(エデュカーレ情報 No.17 掲載)

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