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「情報」を教えるときに読んでおきたい24冊

インターネットにも情報はあふれていますが,物事を体系立てて学ぶにはやはり書籍が役立ちます。教科「情報」を教えるときに参考となる書籍を,大学や高校で「情報」にかかわる先生に聞きました。
※書籍の発行年は初版,価格は消費税込で示しています。


東京大学大学院 教授  山口 和紀 先生


やさしいコンピュータ科学

Alan W.Biermann:著 和田英一:監訳 アスキー 1993年 495ページ 4,893円

 MIT(マサチューセッツ工科大学)で使われたコンピュータ科学(情報科学とほぼ同義)の一般教育向け教科書である。コンピュータ科学を専門にする学生ではなく一般の学生に,情報科学のエッセンスである「重要概念」を教えるという立場を取っている。決定木,テキスト処理,数値計算,データベース,ソフトウェア工学,電気回路,トランジスタ,VLSI,アーキテクチャ,言語,計算量,並列計算,計算可能性,人工知能と幅広い内容が取り上げられている。内容はオーソドックスだが切り口が楽しい。しかも,お話だけでなく,実際にプログラムを書いて動かしてみようということで,Pascal言語(原著ではJava言語版も出ている)による演習がついており,その題材もおもしろい。


情報学の理論と実際

Brian C.Vickery, Alina Vickery:著 津田良成,上田修一:監訳 勁草書房 1995年 540ページ 8,925円

 情報はともすると,コンピュータによる処理を中心に捉えてしまいがちであるが,本書は,図書館から見た情報の概観である。人間にとっての情 報,実際のデータの特性,図書館を中心とした社会での情報の扱いなど,情報科学とは少し違った切り口で書いてあり,いろいろと考えさせられる。情報システムに関する部分は古くなっているところもあるが,他分野からはこのように見えているという意味で,かえって参考になることもあろう。


一般システム思考入門

Gerald M.Weinberg:著 松田武彦:監訳 紀伊國屋書店 1979年 342ページ 3,772円

 「情報システム」のように「システム」と名のつくものは多数あるが,システムについてきちんと学ぶことは普通はあまりないであろう。本書はシステムを扱ったものであるが,身近な題材を扱って一般向けに書かれており,読みやすい。各章の研究課題も示唆に富む。「情報システム」が普及した現在,本書を読むといろいろと思いあたることもあり,驚かされる。


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三重大学 教授  奥村 晴彦 先生


マッチ箱の脳(AI)―使える人工知能のお話

森川幸人:著 新紀元社 2000年 221ページ 2,310円

 WindowsやOfficeをブラックボックスとして操作する技能を身につけるための本は山ほどあるが,子どもたちにコンピュータ科学の楽しさを教えてくれる本は非常に少ない。本書はそのような本の1つである。本書を読んで,ニューラルネットワークや遺伝的アルゴリズムなどについての蘊蓄うんちくを生徒に熱意をもって語れば,将来コンピュータの研究をしたいと考える生徒が出るかもしれない。なお,ネットを探せばオンライン版が見つかるかもしれない。:-)
 ※2008年1月現在,この書籍は絶版になっています。


ハッカーズ

Steven Levy:著 古橋芳恵,松田信子:訳 工学社 1987年 622ページ 2,625円

 蘊蓄といえば,コンピュータの歴史も楽しい。技術史より人間的な話のほうが,コンピュータの苦手な生徒も惹き付けるだろう。本書は,コンピュータ黎明期の人々を描いた楽しい歴史書である。今はハッカーという言葉は悪い意味に使われることが多いが,ここでは歴史的な意味で使われている。その意味を理解するためにも本書は必読の書である。


インストラクショナルデザイン−教師のためのルールブック

島宗理:著 米田出版 2004年 182ページ 2,100円

 コンピュータの実習は楽しいけれど何を学んだかわからないものになりがちである。本書は,コンピュータに限らず,人にものを教えるための原則を解き明かした本。インストラクショナルデザイン(ID)の考え方は,先生自身の教え方のヒントになるだけでなく,コミュニケーション技術として生徒に教えてもいいかもしれない。


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一橋大学 准教授  兼宗 進 先生


コンピュータを使わない情報教育 アンプラグドコンピュータサイエンス

Tim Bell,Ian H.Witten,Mike Fellows:著 兼宗進:監訳 イーテキスト研究所 2007年 120ページ 1,575円

 コンピュータの内部で行われている処理の考え方を,体験を通して学習するための方法が紹介されている。取り上げられている内容は,二進法や画像のビット表現,情報圧縮,探索,並べ替えなどがあり,教科書と結び付けて扱うことができる。対象年齢は小学校高学年以上となっており,初心者が教具やゲームなどを使い楽しみながら学習できるよう工夫されている。情報の授業では,最初にこの教材で興味をもたせ,教科書と解説で発展させる使い方が効果的である。授業で配布できるワークシートが用意されており,各章のコラムでは,学んだ内容がどのように社会で使われているかが解説されている。


情報 (東京大学教養学部テキスト)

川合慧:編 東京大学出版会 2006年 288ページ 1,995円

 東京大学教養学部で使われている標準テキストである。学部や専攻に関係なく,すべての大学生が知っているべき情報科学の基礎がまとめられている。幅広い分野が簡潔に紹介されており,情報の教員にとって参考になる部分が大きい。あらかじめざっと全体を眺めておき,授業の前に関連する部分の解説を読んでいく使い方が便利である。


プログラミング言語ドリトル

兼宗進:著 イーテキスト研究所(近刊)

 授業の中でプログラミングを活用する事例が紹介されている。文字やグラフィックスだけでなく,生徒の画面どうしで通信するチャットプログラムや,ロボットや飛行船を制御するプログラムを簡単に作れるので,ソフトウェア,情報通信,計測制御などの教材として利用することができる。オンライン版はウェブブラウザで動作するため,事前にインストールなどの準備をしなくても利用できる。
▼2008/10/10 編集部追記
この書籍は,2008年9月に『ドリトルで学ぶプログラミング グラフィックス,音楽,ネットワーク,ロボット制御』として発行されました。


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千里金蘭大学 専任講師  中野 由章 先生


(1)生きるための知識と技能3 OECD 生徒の学習到達度調査(PISA) 2006年調査国際結果報告書

(2)PISA 2006年調査評価の枠組み―OECD 生徒の学習到達度調査

国立教育政策研究所:編 ぎょうせい 2007年 (1)308ページ,(2)177ページ (1)3,990円,(2)2,500円

 この2冊はセットで推薦したい。次期学習指導要領で学習内容が増加に転じるきっかけとなったPISA については,その中身をしっかり理解する必要がある。PISA とは,15歳の生徒を対象に,OECD が3年毎に行っている学習到達度調査である。PISA では「数学的リテラシー」「読解力」「科学的リテラシー」の3つの柱で調査が行われていたが,2006年はこれらに加え「問題解決能力」も調査されている。この中で「読解力」と「問題解決能力」は,教科「情報」で育成しようとしていることそのものであり,情報科教員は教科の教育目標をここに見出すことができると考える。


情報処理学会誌『情報処理』 2007年11月 Vol.48 No.11

情報処理学会:編著 オーム社(会員外発売所) 2007年 140ページ 1,680円

 情報処理学会員には毎号送付される雑誌であるが,この号では「変わりつつある情報教育」という特集が組まれており,小・中・高等学校における情報教育の実践事例紹介や,教科「情報」制定の経緯,海外の動向,大学入試,そして大学における情報教育に至るまで,コンパクトかつ体系的にまとめられている。単体で購入すると高価だが,その内容は情報科教員ならば必見である。


National Educational Technology Standards for Students Second Edition

NETS Project, Susan Brooks-Young:編著 ISTE 2007年 25ページ $12.95

 国内のみならず,海外の動向にも注意を払っておきたい。その中でも,日本が最も影響を受けている米国においては,ISTE が教育工学に関する基準(NETS)を公開している。NETS for Studentsの第2版が2007年に公開された。この日本語訳は私が現在進めている。これに続き,NETS for Teachersが2008年に,NETS for Administratorsが2009年に公開される予定である。


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(エデュカーレ情報 No.20 掲載)

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