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JICAの職員の方に聞きました
話を伺った方  八星 真里子 さん   広報室 地球ひろば推進課
徳田 由美 さん  人間開発部 基礎教育グループ
 ■どのような仕事をされているのですか?
 ■仕事をされる中で,面白味を感じる時や大変だと思う時はどのような時ですか?
 ■国際協力の仕事を志したきっかけは何ですか?学生時代から国際協力の仕事を目指していたのでしょうか?
 ■八星さんは青年海外協力隊の経験があるとのことですが,どの国でどのような活動をされていたのですか?
 ■青年海外協力隊の派遣中,印象に残っていることはありますか?
 ■青年海外協力隊の経験を通して,ご自身が変わった,成長したと実感されていることはありますか?
 ■国際協力のプロとして,教育現場に望むことはありますか?
 ■最後に,高校生へのアドバイスをお願いします。



■どのような仕事をされているのですか?

八星さん:JICAでは,日本の教育現場で世界の現状や開発途上国が抱える課題への理解を深めてもらうため,国際理解教育や開発教育の実施の支援を行っており,そのための教材やプログラムの企画・実施をしています。最近では,ニュースや途上国の映像をまとめ,授業で使える映像教材「難民」「イスラーム」「教育」「国際協力」を作成したり,教育業界関係者にJICA の国際協力支援事業を伝えるセミナーを開催したりしています。

徳田さん:開発途上国の基礎教育の課題を現地調査などで把握・分析し,その情報に基づいて技術協力プロジェクトや無償資金協力の案件を途上国側政府と合意しながら形成しています。プロジェクト開始後は,計画に基づいて進捗しているかモニタリングし,プロジェクト活動による成果が発現しているかや,プロジェクトで目指す目標が達成しているかなどを評価しています。現在は,JICA 本部のある東京をベースとして,年間4〜5回(2〜3か月に1回),開発途上国(現在の担当国は,ミャンマー・ラオス・インドネシア・ホンジュラスなど)に出張し,その国でのプロジェクトの案件形成やモニタリングなどを行っています。


■仕事をされる中で,面白味を感じる時や大変だと思う時はどのような時ですか?

八星さん:学びに対して真剣な方々に出会い,ともに教育について考えていけることです。JICAに勤務する前は非常勤教師として中学校に勤務していたのですが,そもそも教師になろうと思ったのは,青年海外協力隊として派遣されたニカラグアで「分かった!」「できるようになった!」と目を輝かせる子どもたちを目にしたからです。同じような想いを胸に教育に取り組んでいらっしゃる様々な方々と,それぞれの特性やリソースをどう活かし合えるかを話し合い,形にしていくことはとても面白いです。

徳田さん:担当する開発途上国に出張する際には,必ず教育現場を訪問し,教育現場の裨益者の声を聞くことを大切にしています。たとえばエチオピアでは,ある農村部僻地の村にあるJICAが支援した学校で学ぶ,小学校の適齢期を過ぎた女子生徒から「この学校が私の村にできなければ,結婚するしか人生の選択肢がなかったが,今は進学という夢がある」と聞くことができ,大変嬉しく思いました。インフラが整わない国への出張は大変ですが(たとえばタジキスタンでは,真冬に宿泊先ホテルの暖房が止まり,日本から持参した洋服を重ね着して暖を取って寝たことがあります),大変な国であればこそ,基礎教育の必要性も高いので,やりがいがある仕事だと感じています。


▲ラオスの首都ビエンチャン郊外の小学校に,算数教育の現状を聞き取り調査した際に撮影した集合写真(徳田さん)

■国際協力の仕事を志したきっかけは何ですか?学生時代から国際協力の仕事を目指していたのでしょうか?

八星さん:高校時代にブラジルに留学し,大学時代はバックパック旅行を楽しみましたが,海外に面白味を感じつつも仕事については言葉が通じる日本がよいと思い,国際協力の仕事は特に考えたことがありませんでした。民間のコンサルタント会社に就職しましたが,すでに豊かな日本の経営者支援より,もっと困っている人の力になることに自分の20代を注ぎたいと思い,ふと見つけたポスターがきっかけで青年海外協力隊に応募しました。協力隊の経験を経て教師を志し,現在の仕事に至っています。

徳田さん:学生時代は「海外で仕事を持って暮らしてみたい」という程度で,国際協力に強い熱意があったわけではありませんでした。大学卒業後,シンガポールの日本人学校で小学校教師をしましたが,夏休みなどを利用して東南アジアの近隣国を訪問した際,ストリートチルドレンなど学校に通えない子どもたちがいる現状を目の当たりにしました。「このまま日本の子どもたちを教えるだけでよいのか」「自分も開発途上国の教育開発に携わりたい」という想いが強くなり,国際協力の仕事を志しました。小学校教師をやめてロンドン大学の大学院で教育と国際開発の修士号を取得した後,国際協力の仕事に転職しました。


■八星さんは青年海外協力隊の経験があるとのことですが,どの国でどのような活動をされていたのですか?

八星さん:2007年6月から2009年6月の2年間,ニカラグアにあるヌエバギネア市保健センターで,若年妊娠・性感染症予防のための性教育(健康教育)を中心とした青少年開発業務を担当していました。ヌエバギネアは首都マナグアから南東に約300kmに位置し,車で7時間かかります。隊員からは「陸の孤島」とも呼ばれていました。協力隊の活動としては,自己肯定感を持ち,自身の人生設計をするための自己啓発授業や,自分の住みたい街を考えてその実現のために取り組む環境教育を行いました。また,ほかの隊員の力を借りて,学校教師向けに算数の授業改善セミナーや,医療従事者向けに日本のサービス精神(ホスピタリティ)をロールプレイを通じて学ぶセミナーを実施しました。授業を行うにしても,停電があったり,教材がなかったりとさまざまな困難がありましたが,簡単にできないと言ってしまうのではなく,電気がなくても使える紙芝居を用意したり,先生が読むだけで形になる教材を作成したりなど,いろいろな方法をチャレンジしました。


▲ニカラグアでの環境授業。住みたい街づくりのためにゴミ拾いをしているところ(八星さん)

▲小学校教員隊員の力を借りて,現地教員向けに授業改善セミナーを開催(八星さん)

■青年海外協力隊の派遣中,印象に残っていることはありますか?

八星さん:当初,隊員活動としてニカラグアで日本文化の紹介や日本語教室をすることに否定的でした。彼らのほとんどが日本に来れないのに,日本語や日本文化を学ぶ暇があったら,手先を器用にさせる図画工作などの実践的な授業の方が有用だと思っていたからです。しかし,何かの折に教えた「おはよう」という言葉を,子どもたちがずっと大事に覚えていて,私が家の前を通るたびに「おはよう!」と叫び,母親に「日本語で朝の挨拶はおはようっていうんだよ!」と自慢げに話す様子を見て,自分が無意味に思っていたことも,彼らにとっては周囲が知らない新しい知識を得た非常に喜ばしい経験なのだと気づきました。その後,「多様な価値観を知る」というコンセプトで日本文化を紹介するイベントなどを行い,好評を得ました。


■青年海外協力隊の経験を通して,ご自身が変わった,成長したと実感されていることはありますか?

八星さん:「誰かのためになりたい」という想いで協力隊に参加しましたが,実際のところ,現地の人々に助けられてさまざまな活動に挑戦できた2年間でした。「(日本で)このやり方が正しい」と思っていたことが,ところ変われば決して正しくはなく,現場の状況をよく観察して人々と話し合いながら判断し,動いていくことが重要であると強く実感しました。また, 協力隊として「教える」経験をしなければ,現在の仕事にも就いていなかったと思います。


■国際協力のプロとして,教育現場に望むことはありますか?

八星さん:新しい学習指導要領では「グローバル化する国際社会に主体的に生きる」力が示唆されました。この力の育成に,私たちが開発途上国の現場で培ってきた国際協力の経験が活用いただけるのでは,と思っています。たとえば,お近くのJICA 国内拠点や国際協力推進員にご相談いただければ,学校で開発途上国の生活や国際協力現場を語る出前講座や,情報提供にご協力いたします。また,JICA地球ひろばの持つ「先生のお役立ちサイト」では,国際社会の課題を扱った教材や,国際理解教育の授業実践事例を掲載しています。私たちの知見が日本の教育現場で活用いただけることは大歓迎ですので,どうぞお気軽にご連絡ください。

徳田さん:高校においても,ぜひ開発途上国での現状を題材や教材にした授業を展開していただきたいと思います。日々の新聞やニュースなどを活用して開発途上国の現状や課題が,日本の高校生の身近な話題とどのように繋がっているか解説していただけると,高校生にとっても理解が進みやすいと思います。また子どもは,同世代の世界の子どもがどのような状況にあるのかという話や,同じ日本の高校生が開発途上国の問題解決に向けて具体的にアクションを起こしているという話題に対して関心を持ちやすく,共感も得られやすいため,世界の高校生の置かれている状況や日本の高校生の国際協力への取り組みを紹介するとよいかと思います。たとえば,認定NPO法人フリー・チルドレン・ジャパンのサイトでは,日本の中高生による国際協力活動の一例が紹介されています。


■最後に,高校生へのアドバイスをお願いします。

八星さん:私自身,高校時代に特に夢はなく,初めて夢を描けたのは協力隊の経験を通じ「教師になりたい」と思った時でした。一度は教師になるも,その後夢が変わり,今は現場から離れて教育に取り組んでいますが,夢が見つからぬまま働いていた時間も,教員免許取得の勉強に集中していた時間も無駄とは思いません。懸命に取り組んだ経験は,今の仕事に生きています。ですので夢が見つかった時,それに向かって走り出せるよう,スポーツ,音楽,趣味…何でも「上達したい!」と思えることに打ち込み,失敗と成功を重ねることをおすすめします。

徳田さん:大学受験に関係のない教科でもきちんと学んでおくことで,その後大学生や社会人になった時の教養となるので,高校時代には幅広く学ぶことをおすすめします。また,部活動や学校の行事に一生懸命取り組むことで,大変よい思い出になり,それがその後の人生の糧となりますので,勉強以外の活動にも積極的に取り組んでいただければと思います。